市場構造の変貌とみかん産地の盛衰
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概要
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本稿は, 近年における日本農業の停滞・衰退傾向に抗して, 農業の維持・発展をみている地域としてみかん産地を取り上げ, その要因を分析したものである. わが国みかん農業は, 基本法農政の下に, 1960年代以降生産を急増させ, 西日本を中心に主産地が形成された. しかし, 1972年以降は生産過剰にともなう慢性的な不況に陥り, 生産は地域差をともないながら大きく減少した. 一方, この間におけるみかんの市場構造の変化をたどるなら, 需給関係や消費嗜好の変化から, 次のように時期区分できる. (1)需要が供給を上回り, おおむね高収益が期待できたI期(〜1971年), (2)生産過剰が顕在化し, 農家の赤字経営が続いたII期(1972〜1983年), (3)品質による価格差が明瞭になってきたIII期(1984年〜)である. そして, 近年のみかん産地は, このような市場構造の変化への対応の差異から盛衰を分けてきた. 事例として取り上げた和歌山県には, 農協共撰の他に多数の個撰出荷組合が存在し, 両者は近年の市場構造に適切に, また多様に対応してきた. 同県が他産地に比べて産地を維持・発展させてきた要因は, ここに求められるであろう.
- 経済地理学会の論文
- 1993-12-31
著者
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