生活の質と生活環境に関する地理学的研究 : その成果と展望
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概要
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本研究の目的は, 社会指漂にはじまり, 生活水準から生活の質にいたる一連の研究を考察して, 問題点を明らかにするとともに, 生活環境の地理学的研究に対する展望を行うことである. 初期の研究では, 国の社会状態を把握するため, 社会指標の測定が行われた. 特に, 生活の経済的側面に注目した研究は, 生活水準の測定とよばれた. しかし, 1960年代後半以降, 先進諸国を中心に, 福祉, 文化, 環境などの非経済的指標でとらえる生活の質の測定が重視されるようになった. これら一連の研究では, おもに, 国や都道府県のレベルで生活の状態について分析が行われてきた. しかし, 生活の質には, 空間的側面が含まれていないので, 本稿では, それに代わる概念として生活環境を用いることを提案する. 環境には, 構成要素と場所の2つの視点からのとらえ方があり, 生活環境は, 居住地点という場所を中心にみた環境である, 生活環境を測定する場合, どんな種類の構成要素を組み立てていくかが問題であり, 近年では, 近接性の側面が重視されている. 生活環境の分析では, コミュニティにおける生活環境の量的側面を客観的に測定するとともに, 質的側面を主観的に評価する必要がある. 生活環境に対する満足度のような質的側面は, 評価することが難しいこともあり, ほとんど研究されてこなかった. 今後, 客観的測定に主観的評価を組み込むことによって, 住民が満足する生活環境の状態が明らかとなるであろう. 生活環境の測定法としては, 近接性の側面からの測定が重要である. 特に, 居住地点を中心とした選択機会数を, 距離や時間的枠組みに注目し測定することで, 生活環境の地域的差異が明らかになる. そして, その地域差を改良していくことが, 生活環境の向上につながる. 指標の総合化のためには, 多基準評価法が利用できる. この方法は, さまざまな側面を多面的に考慮して総合的に評価するため, 生活環境評価に有効であることが本稿で示された. 多基準評価法を地理情報システムの中に組み込むならば, 地域の生活環境の表示, 分析, 評価を行うシステムを構築することが将来可能となるであろう.
- 経済地理学会の論文
- 1993-09-30
著者
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