617. 秋田県北部二ツ井地方の大桑万願寺動物群
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概要
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自生群または自生個体についてみると, 二ツ井付近に分布する鮮新統に含まれる貝化石群には, 相伴って発見される種の組合せと個体頻度の相異によって四つの群集型が識別される。すなわち鮮新統下部の泥相中のNuculana robaiとTurritella nipponicaなどの巻貝に富む群集, その上位の細粒砂相の下半分にみられるT. saishuensis, Limopsis tokaiensis, Acila nakazimaiを主とする群集, 上半部のT. saishuensis, Macoma tokyoensis, Mercenaria stimpsoniなどで特徴づけられる群集, および中部の小区域にみられるFelaniella usta, Thracia kakumanaの群集である。鮮新統上部の中粒砂相には, Umbonium akitanum, Glycymeris yessoensisの多い他生群があり, これを仮に中粒砂を代表する, 5番目の群集として扱う。これらの群集の分布は岩相の分布と一致し, その境は岩相の境とともに時間面を切る。一方この鮮新統は全体として海退・浅海化の傾向下における堆積物と判断され, 群集の時空分布は, 基本的には海の浅化, 海域の縮少という環境変化に支配されるが, 各群集の境界の位置は岩相の分布に規定されているといえる。すなわち下位から上位への群集の排列は, 当時の海底における深所から浅所への群集の変化をある程度まで示唆するとみてよい。二ツ井でみられるこのような群集型とその相互関係は, 大桑万願寺動物群の一つの代表的な例と思われ, 同じ組成の群集が各地に認められる。
- 日本古生物学会の論文
- 1973-06-20