538. 房総半島, 上総層群の底棲有孔虫分帯
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概要
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下部鮮新-下部更新統・上総層群の, 房総半島北部, 東京湾岸から太平洋岸にいたる東西断面内の底棲有孔虫化石群集についてまとめた。火砕岩質鍵層や岩相区分にてらして, 各化石群集の層位学的分布や垂直的・水平的な変化を明らかにし, 優勢種および特徴種については概略の分布を図示した。また, 化石群集によって上総層群を17の化石帯に区分する。これらの底棲群集やその変化は第1に, 堆積盆地の海の深さによって規定されている。東部地域で最下部の勝浦-大原層にみられるGyroidina-Melonis群集はlower bathyalのものであり, 中西部の基底の砂岩からのCassidulinaを主とする群集は一種の混合群集である。どこのセクションでも, それから上の層準にむかって順に, Bulimina-Bolivina, Uvigerina, Cassidulinaの各群集, さらに浅海性群集へと変化する底棲群集の層序がみとめられ, 中新世からの堆積盆地がこの時期に浅海化していったことを示している。水平的にはどの層準でも, 東部より西部へ, 次第に海がより浅くなる環境にあって, 横の群集変化も垂直的な変化とよく似た傾向をもっている。また, 多くの浅海性種が西より運ばれて, 東のより深海性の群集のなかに混入している。深海性の地層にあっても親潮の影響の強かった時期には, 浮遊性群集ばかりでなく底棲群集の入れかえもおこなわれた。上総層群中〜下部には, 化石群集や構成種からそのような冷水温期が, 時間に平行な化石帯として識別できる。冷水温期は数回くりかえして現われ, 当時の古気候の変動を示している。上総層群の各化石帯の群集組成・特徴や分布についてのべ, 多産する小型の底棲有孔虫4新種を記載した。
- 日本古生物学会の論文
- 1968-06-30
著者
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青木 直昭
Institute of Geology and Mineralogy, Tokyo University of Education
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青木 直昭
Institute Of Geology And Mineralogy Tokyo University Of Education
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