日本産ホンヤドカリ属の1新種
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概要
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函館湾,和歌山および熊本県天草松島から採集された標本に基づき,ホンヤドカリ属の1新種pagurus nigrofasciaを記載した.本種は,北アメリカ西岸に分布するP.samuelis(Stimpson,1857),P.hirsutiusculus(Dana,851),P.venturensis Coffin,1957,および日本を含む西部北太平洋温帯域に分布するP.filholi De Man,1887(ホンヤドカリ)に近縁であると考えられるが,いくつかの形態的特徴と色彩により容易に識別される.本新種は函館湾では周年にわたり潮間帯岩礁で普通にみられるが,他の産地では冬から初春にかけて出現するのみである.また,これまでの本邦各地における調査にも関わらず,本新種が採集されたのは上記の3カ所だけであった.Stimpson(1858)が,函館湾からP.hirsutiusculusとして記録したものが実際には本新種であった可能性があるが,標本はシカゴ大火災の際に失われたものと考えられ,現在では確認できない.標本に基づいたP.hirsutiusculusの本邦における記録は,stimpson(1858)の他にはYokoya(1933)による津軽海峡の水深110mからの採集記録があるが,Yokoyaの標本は採集水深が探すぎ,P.hirsutiusculusとも本新種とも異なるものと考えられる.最近の文献においても,本邦におけるP.hirsutiusculusの分布は現在のところ確認されていない.文献の記録に基づき,P.hirsutiusculusにはエゾホンヤドカリという和名が与えられてきたが,エゾホンヤドカリの分類学的位置を決定するのは現時点では不可能であり,本新種には新称ヨモギホンヤドカリを提唱する.
- 日本甲殻類学会の論文
- 1996-12-20
著者
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