状態化形式「(テ)イル」と状態のタイプ
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概要
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本発表では,「動詞のテ形+イル」という形式を考察の対象とし,「イル」を金水(1994)にもあるように「状態化形式」と見なし,状態のタイプを「ガ格名詞句の状態」と「発話の根拠となるものの状態」の二種類に下位分類することを目的とした。方法としてまず,従来の研究であまり問題にされることのなかったガ格名詞句の指示のあり方を取り上げた。これは,「他動詞のテ形+イル」が「進行」になる場合と「結果の継続」になる場合では,ガ格名詞句の指示のあり方が異なることを,「誰かが穴を掘っている。」のようなガ格名詞句が不定名詞のものを用いて検証したものである。つまり,「進行」のガ格名詞句は特定指示を行っているのに対して,「結果の継続」のガ格名詞句は非特定指示を行うというものである。また,「他動詞のテ形+イル」が「進行」になる場合と「結果の継続」になる場合では,発話の状況が異なることも指摘した。つまり,「他動詞のテ形+イル」が「結果の継続」になる場合は,必ず眼前事態を描写していなければならず,非眼前事態を描写することはできない。これに対して「進行」になる場合は,眼前事態を描写することも可能であり,また非眼前事態を描写することも可能である。以上の二つの特徴は,あくまでも,「他動詞のテ形+イル」が「結果の継続」になる場合に限られ,「他動詞のテ形+イル」が「進行」になる場合や「自動詞のテ形+イル」には現れないことも併せて指摘した。以上のことから,「他動詞のテ形+イル」が「進行」になる場合や「自動詞のテ形+イル」は「ガ格名詞句の状態」,「他動詞のテ形+イル」が「結果の継続」になる場合は「発話の根拠となるものの状態」であると結論付けた。
- 日本語学会の論文
- 2001-03-31
日本語学会 | 論文
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