方言からみたシカの構文的特徴と成立過程
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概要
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現代日本語でシカに代表される<其他否定>の助詞の構文的特徴とその成立過程について,文献の歴史から宮地1997で提出した仮説に,方言形式およびその分布からの検証を試みた。『方言文法全国地図1助詞編』51図「百円しかない」に記述される複合形式に注目すると,(1)その構造はほぼすべて[(当該地域の)[名詞の限定要素]+(当該地域の)<其他否定>助詞]であること(2)言語地理学的側面から複合形式[PQ]と[P]の史的前後関係に関して考察した結果,宮地1997の推定に矛盾逆行する決定的な反証:[P]→[PQ]という推定は得られないこと,が確認された。これらは宮地1997から得られた仮説:(1)<其他否定>と係助詞たる構文的特徴との不可分性(2)[○+其他否定の係助詞]という構造の複合形式の前部要素たる段階が[名詞の<数量・程度>の限定要素]の<其他否定>用法獲得の契機となる可能性:に矛盾しない。本稿は文法史に方言を用いた研究の一つであり,日本語文法史における係助詞の機能の解明に新たな切り口を示すものでもある。
- 2000-06-30
著者
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- 沼田善子著, 『現代日本語とりたて詞の研究』, 2009年2月14日発行, ひつじ書房刊, A5判, 280ページ, 6,200円+税
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