Na_2O-P_2O_5系ガラスの応力緩和
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概要
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無機高分子物質の多くは, 分子構造にもとづく物性が有機高分子と無機ガラスの中間に位置する. その代表的なものとしてNa2O-P2O5系ガラスを選び, ガラス転移温度付近における応力緩和現象を研究した. Na2O-P2O5系ガラスは, メタ組成をさかいとして, 橋かけ構造をとるウルトラ領域と, 鎖状構造をとるポリ領域に分けられる. 試料をこれらの組成領域に分類し, 一定温度における応力の時間変化を, 約1011から106dyn/cm2の範囲で約103秒間測定した. 試料は, 歪が微少ならば線形粘弾性を示す. 応力が107dyn/cm2より大きいところでは, 時間-温度の重ね合せは有効である. 移動因子-温度の関係は, ポリ領域ではWLF式に近く, 架橋密度の大きくなるにつれて, これからずれてくる. 107dyn/cm2より小さい範囲では, 重ね合せは成立せず, 緩和曲線に屈曲 (擬ゴム状平坦) があらわれる. 緩和スペクトルの幅はウルトラ領域において架橋密度が増大すると (3次元性が増大すると) 狭くなってゆき, これは有機高分子における理論と一致する. 当然のことながら, ポリ領域において平均重合度が減少すれば, スペクトルの幅は狭くなる. ウルトラ領域での緩和スペクトルは, 短時間側に大きなもの, 長時間側に小さなものがあらわれる. 前者はWLF型であることから, 骨格分子のミクロブラウン運動を反映した物理的緩和, 後者は重ね合せが成り立たないことから, 分子の切断, 再結合を反映した化学的緩和であると考えられる. ポリ領域では高い温度になると結晶化が著しくなり, 低い応力の範囲は測定できない. しかし, 最大緩和時間の対数と平均重合度の対数の関係は直線的であり, この傾きが約1.5であることから, ポリ領域では, 分子と分子のからみ合いによる流動は生じていないことがわかった. ウルトラ領域において見られた擬ゴム状平坦は, 有機高分子におけるゴム弾性現像とは異なり, 流動領域における最大緩和時間と温度の関係はアーレニウス性を示す. このことから, 流動領域ではまず結合強度の弱い架橋点が切断-再結合し, 次に (より高い温度で) 鎖状骨格の一部分が切断-再結合して, 応力が緩和してゆく過程をたどるものと考えられる. 擬ゴム状平坦の大きさと架橋点間分子量との関係にゴム弾性論を適用すると, ガラス状態を形成する骨格分子は, 数Åの周期をもった螺旋状の構造をとることになる.
- 社団法人日本セラミックス協会の論文
- 1972-05-01
著者
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