カラードプラ法を用いたヒト胎児心腔内血流動態に関する研究 : 分娩時におけるヒト胎児三尖弁逆流について
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概要
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ヒト胎児心腔内血流動態は, 分娩中においては胎児に対して子宮収縮というストレスが加わるため, 安静時のそれと比較して一層複雑になることが予想される. 本研究では, カラードプラ法により分娩時におけるヒト胎児の三尖弁通過血流信号を連続的に検出し, 胎児三尖弁通過血流パターンと子宮収縮および胎児心拍パターンとの関連性について検討を行つた. 対象は妊娠36週から41週のヒト胎児17例であり, Apgar scoreは8〜10点で,全例新生児仮死を認めず, また全例出生後先天性心疾患のないことが確認されている. 延ベ155回の子宮収縮に対応する胎児心拍パターンは, deceleration (-) 123回, earlydeceleration 11回, variable deceleration 18回およびlate deceleration 3回であつた. 155回の子宮収縮のうち25回の子宮収縮に関連して胎児三尖弁逆流信号を検出した. その胎児心拍パターン別の出現率はdeceleration(-)時4.9%, earlydeceleration時0%, variable deceleration時100%およびlate deceleration時33%であつた. なお, deceleration (-)時およびlate deceleration時に胎児三尖弁逆流信号を認めた胎児は, 少なくとも1回はvariable decelerationが出現した胎児であつた. 胎児三尖弁逆流信号の出現時相の検討では, 胎児三尖弁逆流信号はvariable deceleration時にはrecovery phaseに出現し, severe variable deceleration時にはrecovery phase開始点よりも早期に, 徐脈進行中に出現した. 以上より, 分娩時に心疾患を有しない正常胎児において三尖弁逆流が出現することが判明した. この三尖弁逆流は胎児心臓の前負荷が増大することによつて起こることが推察された. またsevere variable decelerationにおいては, 臍帯因子の解除は徐脈開始後, 早期に起こるが, その後別の因子により胎児心拍数はさらに徐脈に向かうことが示唆された.
- 社団法人日本産科婦人科学会の論文
- 1989-09-01
著者
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