高速液体クロマトグラフィーを用いた羊水中Lecithin/Sphingomyelin ratio (L/S比)測定とその臨床応用
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概要
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胎児の肺成熟度予測法として, 高速液体クロマトグラフィーを羊水中のLecithin/Sphingomyelin ratio (L/S比)測定に適用し, この測定系の有用性を検討した. 1) L/S比が1.0, 2.0, 3.0, 4.0, 5.0に精製された市販の標準液について, これらを各5回ずつ測定した結果, L/S比=1.0のものが1.21±0.047 (Mean±S.D.) CV=3.84%, L/S=2.0が2.12±0.012 CV=5.59%, L/S=3.0が3.64±0.34 CV=9.40%, L/S=4.0が4.41±0.32 CV=7.35%, L/S=5.0が6.16±0.41 CV=6.75%(CVは変動係数), と測定された. 回帰式は, Y=0.8X+0.17(Y : 標準液のL/S値, X : HPLC値)r=0.984と非常に良好な相関と再現性が得られた. Lecithinの回収率は88.9%, Sphingomyelinの回収率は81.4%であつた. 2) 界面活性がないとされている不飽和レシチンを除去する方法として, アセトン沈澱法が提唱されているが, 同一検体30例を用いてアセトン沈澱法と, これを用いない方法とでクロマトグラフィーの値の相関を検討した結果, Y=3.25X-2.14(Y : アセトン沈澱法を用いないで得られたL/S値, X : アセトン沈澱法によるL/S値), r=0.987と極めて高い相関があり, アセトン沈澱法を省略できる事が示唆された. 3) 64例の臨床症例の内, L/S比測定後72時間以内に分娩したもの, 41例を対象とした. この内9例にrespiratory distress syndrome (RDS)が発症した. L/S=4.20をRDS群と正常群との判別を行う限界値とした場合, RDSの正診率は, 88.9%であつた. また胸水貯留による肺拡張不全症例が3例見られたが, この限界値を適用し, 全例に呼吸不全の予知が可能であつた. 以上の結果より, HPLCによる羊水中のL/S比測定は胎児肺機能を予測する上で, TLC法に比し簡便でかつ, 迅速, 正確な方法であり, 日常の臨床検査法として十分に利用できると考えられた.
- 社団法人日本産科婦人科学会の論文
- 1988-01-01
著者
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