膀帯循環Prostacyclin,ThromboxaneA2動態と妊娠中毒症
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概要
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妊娠中毒症(中毒症)の主要病態は、子宮・胎盤血流量の減少、全身性血管緊縮、またしぱしばみられる血小板の過剰凝集に基づくとされ、近年、それに胎児・胎盤系におけるprostacyclin(PGI_2)とthromboxane A_2(TxA_2)との生成・放出量も係る可能性が示唆されている。そこで胎児と胎盤との間の主要な血管系となる膀動・静脈における両者の生成・分泌動態を、それらの主要代謝物とされる6-oxo・PGF_<1α>、TxB_2動態から検討し、以下の成績を得た。1.正常例では、膀動・静脈血中6-oxo-PGF_<1α>濃度は母体血のそれの約10倍高値となるが、TxB_2濃度はこれらの対象間ではほぼ相違がない。中毒症症例では、膀動脈血6-oxo-PGF_<1α>濃度のみ有意の低値(p<0.001)となり、TxB_2が高値(pく0.001)となつている。2.正常例では、輪切肺動脈と肺静脈血管とにおける基本放出量は6-oxo-PGF_<1α>が膀静脈で高く(p=0.0029)、TxB_2に相違がない。また基質arachidonic acid(A・A)の添加によりいずれも有意に増加し、ことに肺静脈血管における6-oxo-PGF_<1α>の増加が著しく(p<0.001)、TxB2は両者がほぼ同一であつた。3.正常例と比較し、中毒症例の膀動脈血管における6-oxo-PGF_<1α>放出量に推計学的相違がないが(p=0.0698)、A・A添加による増加が認められぬ一方、TxB2のそれは中毒症例で高値となり(p=0.003)、また正常例と同様A・A添加によつて有意に(p=0.0208)増加した。従つて、中毒症例の胎児・胎盤系のうち膀帯血管においても、PGI_2産生・放出量の絶対的低下、あるいはTxA_2産生・放出の過剰に伴うTxA2の相対的増加があり、この変化が末梢血管抵抗の元進、子宮・胎盤血流量の減少あるいは血小板過剰凝集、ひいては中毒症病態の進行・発症に係わる可能性があるものと思われる。
- 社団法人日本産科婦人科学会の論文
- 1986-05-01
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