胎児肺成熟診断を目的とした羊水の表面張力低下能測定に関する研究

概要

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羊水による胎児肺成熟診断法として、臨床的に汎用されているL/S比に比較し、迅速かつ簡易な胎児肺成熟診断法としての羊水の表面張力低下能測定の意義について検討を加えた。妊娠28週から38週までの羊水54検体について脂質を抽出し、各々50μ1,100μ1,200μ1,350μ1,500μ1を15mlの蒸留水面に滴下しWilhelmy法により表面張力(surfacetension:ST)の変化を測定した。羊水のSTの低下pattemをI型:200μ1滴下で45dyne/cm以上、350μ1滴下で36dyne/cm以上を示す群(23例)、II型:200μ1滴下で45dyne/cm以上、350μ1滴下で36dyne/cm以下を示す群(6例)、III型:200μ1滴下で45dyne/cm以下を示す群(25例)、に分類した結果、妊娠週数の増加とともにI型からII型、さらにIII型へと移行する傾向が見られた。またこれらの3型とL/S比との関係についてはI型ではL/S比2.0以上が7例(30.4%)、II型ではL/S比2.0以上が2例(33.3%)、III型ではL/S比2.0以上が24例(96.0%)であつた。羊水中への胎便、血液の混入による影響を検討した結果、I型を示す羊水の例では胎便、血液、溶血した血液のいずれも添加量の増加とともにSTが低下しI型からII型、さらにIII型へと移行したが、III型を示す羊水の例では著明なSTの変化を示さなかった。羊水を各々450×g、1,000×g、2,000×g、5,000×g、10,000×gで10分間遠沈し、遠心力がSTの測定値に与える影響を検討した結果、I型を示す羊水の例では遠心力の増加に対して一定の傾向は見られなかったが、III型を示す羊水の例では2,000×g、5,000×g、10,000×gの遠心力で遠沈した時にSTが増加する傾向が見られた。以上より、本測定法は、羊水への胎便や血液の混入が測定値に影響を与えるが、L/S比と有意に相関し、羊水中の胎児肺由来のsurfactantの活性をtotalに測定するという特徴に加え、迅速に結果が得られ、測定手技も簡易なことから、日常臨床に応用した場合、有力な胎児肺成熟評価法になりうると考えられた。
社団法人日本産科婦人科学会の論文
1986-03-01

胎児肺成熟診断を目的とした羊水の表面張力低下能測定に関する研究

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