婦人科悪性腫瘍患者におけるTissue Polypeptide Antigen (TPA)測定の臨床的意義

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新しい腫瘍関連抗原の一つであるtissue polypeptide antigen(TPA)の婦人科悪性腫瘍における臨床的意義について再検討を加えた.血清TPAはRIA法により測定し,110U/l以下を正常とした. 1)健常女性の血清TPA値は66±21U/l(mean±SD,以下同),陽性率は0%であつた. 2)妊帰の血清TPA値は122±37U/l,陽性率は38%で,健常女性に比して有意に高かつた. 3)良性疾患患者の血清TPA値は96±87U/l,陽性率は17%で,健常女性との間に有意の差は認められなかつた. 4)悪性腫瘍患者の血清TPA値・陽性率は,子宮頚癌181±262U/l・55%,体癌117±49U/l・40%,卵巣癌217±215U/l・53%,子宮肉腫142±49U/l・75%で,健常女性・良性疾患患者に比して有意に高かつた.絨毛癌の1例は血清TPA1,100U/lと高値陽性を示した. 5)子宮頚癌,体癌,卵巣癌の臨床進行期別の血清TPA値・陽性率の間に有意の差は認められなかつたが,頚癌再発例,卵巣癌IV期例,再発例の血清TPA値は260±394U/l,433±311U/l,161±134U/lで,高値を示した. 6)治療前にTPA陽性を示した頚癌7例,体癌3例,卵巣癌3例の血清TPA値はそれぞれ187±88→74±24U/l,167±40→87±8U/l,437±283→89±13U/lと有意に低下し,全例が陰性化した. 7)再発・炎症所見などの認められない治療後の悪性腫瘍患者の血清TPA値,陽性率は頚癌141±106U/l・44%,体癌177±125U/l・64%,卵巣癌143±110U/l・45%,子宮肉腫213±217U/l・67%で,健常女性に比して有意に高かつた. TPAは婦人科悪性腫瘍全般に比較的高い陽性率を示し,血清TPAを測定することは補助診断法の一つとして有意義であり,治療前に高値陽性を示す症例では,腫瘍markerとして予後の推定,治療効果の判定,follow-upに有用であると考えられた.ただし,妊娠,良性疾患,炎症などでも陽性を示すことがあり,また再発所見の認められない治療後の悪性腫瘍例でも陽性率は高く,TPA陽性の解釈には慎重な態度が必要と考えられた.
社団法人日本産科婦人科学会の論文
1985-11-01

婦人科悪性腫瘍患者におけるTissue Polypeptide Antigen (TPA)測定の臨床的意義

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