羊水中低分子量蛋白の起源
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概要
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羊水中蛋白の起源は従来より母体血清由来であるという報告が多いが,羊膜の産生する蛋白および胎児由来の蛋白も一部,羊水中蛋白組成に関与していると考えられる.そこで著者らは正常経睦分娩10例から得られた羊膜10検体をKrebs液中で6時間incubateし,経時的なKrebs液の蛋白濃度の変化と分子量からみた蛋白組成をsodium dodecyl sulfate polyacrylamide gel electrophoresis(SDS-PAGE)を用いて検討した.また新生児10例の初回尿10検体,唾液5検体についてもSDS-PAGEを用いて検討し,以下の結果を得た.羊膜のincubation実験ではKrebs液中の蛋白濃度はincubation開始後60分で1.25±0.21mgから360分の2.33±0.67mgへと有意に増加したが,蛋白合成阻害剤cycloheximideをKrebs液に添加してincubateした例では蛋白濃度が有意に増加しないことから,羊膜に蛋白合成能が存在するものと考えられた.SDS-PAGEによる羊膜incubation実験から得られたKrebs液の分析では,分子量(M.W.)56×10^3以下の蛋白質については,帯15(M.W.=38×10^3),帯18-19(M.W.=23-25×10^3),帯21-23(M.W.=13-19x10^3),が検出され各カの分画値は4.3±1.8%,8.5±1.5%,21.2±3.1%であった.新生児初回尿のSDS-PAGEによる分析ではM.W.=56×10^3以下の蛋白では帯14-15(M.W.=38-45x10^3)のみが25.0±5.2%の分画値で検出された.唾液のSDS-PAGEによる分析ではM.W.=56x10^3以下の蛋白である帯15(M.W.=38×10^3)と帯20(M.W.=22×10^3)が各々24.1±215%,29.7±4.9%の比率で検出された.帯20は羊水中蛋白質には認められないことから,羊水中蛋白組成への唾液の関与は少ないと考えられた.以上の結果より,羊水中低分子量蛋白のうち帯15の蛋白は主に胎児尿に由来し,帯21-23の蛋白は羊膜に由来すると考えられた.
- 社団法人日本産科婦人科学会の論文
- 1984-05-01
著者
-
中野 仁雄
九州大学医学医学研究科生殖病態生理学
-
久永 幸生
産婦人科ひさながクリニック
-
久永 幸生
九州大学医学部婦人科学産科学教室
-
下川 治
九州大学医学部婦人科産科学教室
-
柏原 芳郎
九州大学医学部婦人科産科学教室
-
前里 宗永
九州大学医学部婦人科産科学教室
-
前里 宗永
九州大
-
前里 宗永
九州大学
-
柏原 芳郎
九州大学医学部婦人科学産科学教室
-
下川 浩
九州大学 産婦人科
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