排卵周辺期におけるヒト卵胞のステロイド生合成機能と組織構造
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
成熟卵胞が排卵刺激を受けた後,卵胞破裂が起り,黄体完成に至る過程におけるヒト卵胞の性ステロイド生合成機能の実態を組織構造と対比して検討した.排卵周辺期の開腹患者の卵巣より主卵胞または形成過程にある黄体を摘出し,組織学的検討とともにacetate・1-^14Cを基質とした37℃,3時間の培養を行ない,9種の性ステロイドヘのMCの取り込みを分析した.また一部黄体についてはpregnenolone-4-^14Cの転換能も同時に分析して以下の結果を得た.1)増殖した穎粘膜細胞を有する成熟卵胞はestradiol-17βを最大産生ステロイドとするestrogen優位の生合成パターンを示したが,排卵刺激後の卵胞は全てpmgestogen優位のパターンに変化した.2)排卵過程の進行とともに増加したpmgesteme産生は,同時に認められた穎粘膜細胞の胞体肥大と関連した機能的変化と考えられた.3)排卵過程中期において著明に亢進した17α-hydroxyprogesterone(17HOProg),androgen およびestrogenの産生は破裂直前卵胞で著滅するという2相性の変化を示した.この機能的変化は組織像との対比により排卵刺激後に認められた内夾膜細胞の胞体肥大およびこれに引き続く変性像に関連する事象と考えられた.4)形成過程の黄体ではすべてprogesterone が唯一の主要産生ステロイドであったが,夾膜黄体細胞が明瞭に識別される形成期初期および完成黄体では中間期(2〜4日目)黄体に比して17HOProg およびestrogen の相対的産生亢進が認められた.5)完成黄体に至ってacetate-^<14>Cからステロイドhの取り込みは著減したがpregnenolone-^<14>Cからの転換能は活発で形成期黄体とほぼ同程産の活性が認められ,黄体完成に伴う内因性コレステロールの蓄積が示唆された.以上の成績から,排卵周辺期のヒト卵胞でのステロイド生合成機能は量的,質的に著しく変動しており,かつその背景にはステロイド産生細胞の形態的変化が随伴していることが判明した.
- 社団法人日本産科婦人科学会の論文
- 1979-12-01
著者
関連論文
- てんかん動物(SERとNER)を用いた抗てんかん薬の評価
- Human menopausal gonadotropin投与下におけるヒト卵胞の性ステロイド生合成機能
- 排卵調節における性ステロイドの局所的意義 : 排卵をめぐる卵巣の生理・病理 : ヒト卵巣を中心としての問題点
- 抗プロゲステロン抗血清の幼若ラット誘発排卵に対する抑制効果
- 多嚢胞卵巣におけるandrogen過剰産生部位に関する研究
- 76.多嚢胞卵巣(PCO)におけるandrogen過剰産生部位に関する研究 : 第15群 内分泌 基礎 末梢 その2
- 排卵周辺期におけるヒト卵胞のステロイド生合成機能と組織構造
- 黄体化過程の機能と形態 (黄体機能とりプロダクション)
- 下垂体・卵巣系の異常--無排卵症のゴナドトロピン分泌能について (新しい視点をさぐる--診断のテクニック)
- 1D-15 自然発症てんかんラット海馬CA3錐体細胞における異常カルシウム電流
- Tetrahydro-β-naphthylamineの薬理作用
- 家兎黄体形成過程における性ステロイド生合成機能に関する研究
- ヒト卵胞の成熟、排卵過程におけるステロイド生合成機能と組織構造
- カルシウムチャネル拮抗薬, S-312-dの抗てんかん作用-自然発症てんかんラットを用いた検討