血管内凝固症候群(DIC)に対するAntithrombin III単独療法確立のための基礎的検討
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
産婦人科領域のDICに対する,より安全な抗凝固療法として,AT-III濃縮製剤の単独投与による効果について検討し,次の結果を得た. 1)AT-III製剤1mg/ml中の抗原量は0.625mg/ml,対プール血漿比1.9U/ml,活性は67%であり,同様にAT-III製剤1U/ml中の抗原量は0.54mg/ml,活性は63%であった.以下,AT-III量は製剤量(mgまたはu)で示した. 2)全血800μlにAT-III製剤4mg(200μl)を添加したTEGで,妊婦では,コントロール群,AT-III添加群の順に,r:18.6±0.6,21.0±0.6,K:4.6±0.2,7.2±0.3mm,ma:68.8±1.2,60.3±1.Omm(Mean±SE)で,血漿450μlにAT-III製剤1mg(50μl)を添加したPT,aPTTにおいても,有意に凝固抑制がみられた.AT-III単独では大量添加でも抗プラスミン作用は示さず,FXIIIの活性化のみが抑制された. 3)家兎にエンドトキシン(E)を90μg/kg/hrの速度で10時間持続注入してDICを惹起し,注入開始2時間後にAT-III製剤50U/kgを静注したところ,TEG上明らかな凝固抑制が認められた.凝固・線溶系因子の変動ではコントロールとの間に有意差を認めなかったが,エタノールゲル化試験陽性率は明らかに低く,腎糸球体フィブリソ沈着率もコソトロール46.5±38.7%に対し,AT-III投与群では13.4±27.9%と有意に低かった(p<0.05).死亡率では両群間に有意差を認めなかったが,コントロール群では早期死亡例が多かった. 4)家兎DICモデルで,製剤投与直後の総AT-?活性は153〜198%を示した.投与後4時間の残存抗原量はE注入群56.8±29.8%,非注入群55.8±10.9%で両群ともほぼ同量であった.これに対して,投与後上昇した活性の8時間後の残存率はE注入群40.0%,非注入群24.6%で,DIC例では血中に不活性のAT-?が増加している可能性が示唆された.
- 社団法人日本産科婦人科学会の論文
- 1985-04-01
著者
関連論文
- 414 一酸化窒素合成酵素(NOS)阻害薬による妊娠中毒症モデルラット作製の試み
- 170 胎盤におけるVLDL受容体mRNAの発現と妊娠経過に伴う発現の変動について
- 多項目による妊娠中毒症の発症予知の試み(妊娠中毒症の発症メカニズムとその予知)
- P-137 切迫早産における羊水中顆粒球エラスターゼと子宮頸部超音波断層画像スコアリングの臨床的意義
- 388 Preterm PROMに対する間歇的経腹的羊水補充療法
- 血小板無力症合併妊娠の産科管理
- P-227 絨毛羊膜炎に対する抗生剤治療の有効性と限界についての検討 : 羊水中顆粒球エラスターゼ値を指標として
- P-112 超音波ドプラ法による子宮動脈血流波形を用いた妊娠中毒症予知に関する検討
- 496 経膣走査法超音波画像を用いた妊娠子宮頸部のスコアリング(cervix score)による頸管縫縮術の客観的適応基準について
- 産婦人科領域におけるビタミンKの臨床(ビタミンK)
- P-42 絨毛羊膜炎における羊水中、頚管粘液および血清のIL-6、IL-8の測定意義について
- P-132 双胎妊娠の早産に関与する子宮頚管因子について
- 455 絨毛羊膜炎における羊水顆粒球エラスターゼとサイトカインの関係について
- 206 切迫流早産管理における羊水中および頸管粘液中顆粒球エラスターゼ測定の意義について
- 新しく開発された羊水肺サーファクタント・アポ蛋白(SP-A)濃度測定による胎児肺成熟度判定法に関する研究
- 385 経膣プローベによる頸管無力症の診断に関する検討
- 359 塩酸リトドリン無効例に対する硫酸テルブタリンの子宮収縮抑制効果
- 355 早産(PROMを除く)における絨毛羊膜炎の存在と羊水サーファクタント濃度との関係
- 胎児肺成熟と羊水飽和レシチン濃度 : とくに診断的信頼性について
- 532 妊娠中毒症でのDIC分子マーカーとその臨床的意義について
- 166. 胎児呼吸様運動の持続時間と在胎週数および胎児心拍数一過性頻脈の頻度との関係について
- 396 早期新生児期のビタミンK欠乏性出血症への対応に関する検討
- 卵巣過剰刺激症候群と血栓症
- 386.Microbubble stability法(Pattle:1979)による胎児肺成熟度判定法の基礎的および臨床的検討 : 第79群 胎児・新生児 VI(386〜391)
- 119.DICに対するヘパリン療法の問題点 : 第20群 血液 I (117〜120)
- 羊水中phosphatidylglycerolの酵素的高感度測定法について
- P-I-11 小児外科疾患における出生前診断
- Stable microbubble methodによる胎児肺成熟度判定法の基礎的および臨床的検討
- 血管内凝固症候群(DIC)に対するAntithrombin III単独療法確立のための基礎的検討