乳汁漏出性無月経症の病態に関する基礎的・臨床的研究 : 特に薬物誘導高プロラクチン血症について
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概要
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乳汁漏出性無月経症の病因解析を目的として,薬剤性乳汁漏出性無月経症の病態を臨床的に倹討するとともに,正常性成熟婦人にsulpirideを投与して高PRL血症を誘導し,その病態内分泌学的検討を行つた.さらに雌性ラットにsulpirideおよびestradiolを投与し,血中並びに下垂体中PRLの変動を調べ下垂体lactotrophにおよぼす影響につき検討を加えた.1)乳汁漏出性無月経患者において,薬剤性高PRL血症の血中PRL値は300ng/ml以上を示す例はほとんどなく,血中PRL値が300ng/ml以上の時は下垂体腺腫の存在が濃厚であることを認めた.2)sulpiride投与による人工的高PRL血症では,基礎体温曲線上まず卵胞期の延長と黄体期の短縮を認め,維持または漸増投与にて66.7%に無月経を80%に無排卵を惹起しえた.3)薬剤性無月経症患者の血中estradiol,LH,FSH値は正常性周期の卵砲期初期レベルで維持されていた.また下垂体のGn-RHに対する反応は正常であつたが,hMGに対する卵巣の反応は低下していた.4)ラットを用いた動物実験において,sulpiride投与で血中PRL値は上昇したが,下垂体PRL含量に変化を認めなかつた.5)estradiol投与では,12時間後より血中・下垂体中PRLは上昇し始め,その値は下垂体中で24時間後に,血中PRL値は36時間後にピークを示した.高PRL血症が無月経を発来させる機序として,まず第一に卵巣におけるsteroidgenesisの障害(低estrogen)をひき起こし,それが原因となつて視床下部におけるpositive feed back障害が生ずるものと解釈され,それが持続する状態において高度の視床下部-下垂体-卵巣系不全をひき起こす可能性が暗示された.動物実験では,PIF阻害による高PRL血症状態では,下垂体にPRL分泌・放出の限界が存在することが示唆され,長期におよぶとむしろ疲弊現象が認められた.またestradiolは下垂体lactotrophに対して直接的な刺激作用を有すると解釈された.
- 社団法人日本産科婦人科学会の論文
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