妊娠中毒症における血液凝固線溶系の解析
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概要
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妊婦の血液性状の特徴は過凝固低線溶であり, これがより著明となる妊娠中毒症の病態は慢性 DIC とする説が有力で, また, 妊娠中毒症でほ児発育が著明に遅延することからその関連性が問題となっている. 本研究では, 正常妊婦と重症妊娠中毒症妊婦および各々の臍帯血の血液凝固線溶系諸因子を測定し児体重との関連性について検討し, また, protein C (PC) と antithrombin-III (AT-III), α_2-plasmin inhibitor (α_2-PI) の相関関係から妊娠中毒症の病態解明を試みた. 対象は健康非妊婦18例と正常妊婦200例, 正常褥婦15例, 重症妊娠中毒症46例および正期産32例と重症妊娠中毒症10例の臍帯血で以下の結果を得た. 1. 妊娠中毒症ではフィブリン分解産物 (FDP) の有意の増加, plasminogen (Plg), AT-III, PC の有意の低下, 臍帯血での有意の AT-III の増加と α_2-PI の低下, PC の低下傾向がみられた. 2. 妊娠中毒症児発育不良群では血小板 (Pl) の低下傾向がみられた. 3. 妊娠中毒症児体重正常群では fobrinogen (Fib), Pl の増加傾向がみられた. 4. PC は妊娠初期より増加, 産褥でさらに増加する. 5. 妊婦の PC は AT-III と相関するが α_2-PI とは相関しない. 6. 臍帯血 PC は母体血 PC より低値で, AT-III,α_2-PI と相関する. 7. 重症妊娠中毒症では母体血臍帯血ともに PC は低下し, 母体血において PC とAT-III, α_2-PI間に相関がみられる. 8. 妊娠中毒症で高血圧と蛋白尿がみられる型で PC は低値であった. 以上より, 妊娠中毒症の病態には FDP, AT-III, PC, Plg が, 児体重にはPl, Fib, FDP, α_2-PI の動態が関与する可能性が強く示唆され, PC は妊婦の血液凝固線溶系の把握に有用で AT-III とともに妊娠中毒症の病態の重要な位置をしめ, 重症度および胎児発育に関わっている因子の一つでもあることが示唆された.
- 社団法人日本産科婦人科学会の論文
- 1990-11-01
著者
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