精神身体症に対する絶食療法並びに向精神薬の作用機序に関する脳波的研究
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概要
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精神身体症に対する薬物療法の作用機序に関して幾多の研究があるが未だ不明の点が多い. そこで著者は精神身体症に治療効果を認める方法又は薬剤は脳波に何か特徴を示すのではないかという想定の下に家兎を用いて, 皮質, 大脳辺縁系, 視床下部, 脳幹網様体から脳波を同時に記録して次の成績を得た. なお家兎の固定には東大脳研式固定装置を用い, クラーレで自動運動を抑制しながら気管カテーテルで酸素吸入を行った. 脳内に挿入した電極は銀又は銅線を双極にして使用した. 精神身体症に優れた効果を示す絶食療法と同じ要領で絶食させた家兎の脳波は, 皮質と網様体に殆ど変化を認めず, 大脳辺縁系の一部を占める海馬と視床下部では抑制効果を認めた. この絶食家兎の脳波に比較して精神身体症に効果があるchlordiazepoxideを静脈注射した時の脳波は海馬と視床下部が抑制されたが, 皮質と網様体は殆ど変化がないか, 僅か変化を認めたに過ぎなかった. 精神身体症の治療に使用されたが効果が少かったchlorpromazin, reserpin, meprobamateの静脈注射の際の脳波は上記4部位を殆ど全て抑制するパターンを示した. 大脳辺縁系に比較的多く含まれている亜鉛と排卵促進物質である銅の少量投与の際の脳波は各部位を無変化か又は一過性に興奮に導き, 大量投与の際の脳波は各部位全てを抑制する変化を認めた. 以上の如く精神身体症に対して臨床的に効果がある絶食及びchlordiazepoxideの投与によって海馬と視床下部は抑制されたが, 皮質と網様体は比較的影響されず, 臨床的に効果が少いchlorpromazin, reserpin, meprobamateは前記4部位を全て抑制した. それ故精神身体症の、治療には皮質, 網様体に影響を与えず, 海馬, 視床下部を抑制することが一眼目と思われる.
- 社団法人日本産科婦人科学会の論文
- 1965-11-01
著者
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