子宮頚癌根治手術後の膀胱・直腸機能の保持に関する研究 : 排尿・排便機能回復に対する骨盤神経温存の効果について

概要

論文の詳細を見る
子宮頚癌根治手術のさい骨盤神経の温存を行ないその場合の排尿機能, 排便機能について調査し, 次のような結論をえた. 1) 自尿開始時期は, 温存例で8.2日, 切断例では, 9.9日, 残尿消失時期は, 温存例19.1日, 切断例では23.4日. 自尿開始から残尿消失迄の期間は, 温存例で11.1日, 切断例で14.7日であり, いずれも推計学的に有意差が認められた. 2) 尿失禁の頻度は, 術後2年以内では温存例で有意にその頻度が低かつたが, 術後2年以上経つた症例では, 温存例と切断例の間に有意差が認められなかつた. 50才以上と49才以下の二群にわけて比較すると, 50才以上の年令層では, 尿失禁の頻度は温存例で有意に低かつた. 3) 尿意のないものは, 温存例で37.5%であり, 切断例では54.8%で, この間に有意差が認められたが, 術後2年以上経過した症例では, 両群の間で有意差が認められなかつた. 4) 治療を要する重症の便秘の頻度は術後2年以内では温存例群に有意に低かつたが, 2年以後は切断群との間に差がなかつた. 腹膜被覆を工夫することにより直腸を生理的高さに固定しても, 便秘を効果的には予防することができなかつた.
社団法人日本産科婦人科学会の論文
1972-02-01