BleomycinによるHeLa細胞染色体構造異常について
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概要
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抗腫瘍剤のーつであるBleomycinについては,すでに生化学的な作用機序も明らかにされ,臨床的にもすぐれた治療効果が報告されているが,著者はBleomycinの腫瘍細胞に対する作用機序並びに抗腫瘍効果について染色体学的立場から検討するため,HeLa細胞にBleomycinを作用させて細胞分裂の変化,異常染色体の発現について検べ,以下の結果を得た. (1) BleomycinのHeLa細胞に対する細胞分裂阻止作用は0.1〜0.5μg/mlの低濃度においてすでに軽度にみられ,高濃度になるに従い強い阻止作用を示した.さらに一定時間Bleomycinを作用させた後の6〜72時間後においても,経時的に細胞分裂阻止の増加がみられた. (2) 種々のBleomycin濃度において,濃度の増加とともに異常染色体の増加が観察され,またBleomycinを一定時間作用させた後の6〜36時間後の経時的変化においても異常の増加を示した. (3) Bleomycin作用にょるHeLa細胞の染色体異常の型はheterochromatic regionを有する染色体,breakを有する染色体,gapを有する染色体を特徴とし,dicentric chromosome, ring chromosome, exchangeの発現は非常に少なかつた.また染色体各グループ別ではA, B, C, D群に高頻度に発現した. (4) Bleomycinによる染色体構造異常の型と他の抗腫瘍剤による染色体構造異常の型との間には類似性が認められず,Bleomycinの腫瘍細胞に対する作用機序が他の抗腫瘍剤のそれと異なつた独得のものであることが染色体学的にも云い得るであろう結果を得た.
- 社団法人日本産科婦人科学会の論文
- 1971-06-01
著者
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