本邦妊婦のケトン体代謝に関する実験的研究 (第2報)
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概要
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第1報 (日産婦誌第20巻第2号) においては妊婦に脂質を負荷した場合の母体静脈血血清総脂酸の変動について述べたが, 第2報では第1報総脂酸におけると同一条件下において検索したケトン体の変動について述べ, かつこれらを総括する. 1) 標準食摂取時母体静脈血中ケ1・ン体は妊娠時にやや増量しているが, 脂肪乳剤負荷によって各群とも更に増量, 負荷後1ないし2時間でpeakを示し, この際の増加率は血清総脂酸とは逆に非妊時に最小, 妊娠初期, 末期, 中期の順に大となる. 2) 標準食摂取時尿中排泄ケトン体は妊娠末期にやや増しているが, 乳剤負荷によって各群とも増量, 増加率は中期が最小, 末期, 初期ほぼ相等しくこれにつぎ, ついで非妊時の順に大となる. 以上によって妊娠末期, 特に中期には負荷脂質が円滑にケトン体に移行し, かつケトン体体内保有能が高まっていることが示唆された. 3) 標準食摂取時済帯静脈血中ケトン体量は中期, 末期間に大差ないが乳剤負荷による増加率は末期が大である. 4) 標準食摂取時単位重量当り絨毛組織中ケトン休量は初期に最大で中期, 末期と減少するが, 乳剤負荷による増加率は逆に初期, 中期, 末期の順に大となる. 以上によって腑帯静脈血, 絨毛組織中へのケトン体移行率は妊娠時期の進行と共に高まることが示唆された. 5) 一定期間高脂肪食を摂取せしめた後再度脂肪乳剤を負荷した場合, 妊娠時においては母体静脈血中ケトン体,尿中排泄ケトン体の増加率は著しく減少し, 一方臍帯静脈血中ケトン体,絨毛組織中ケトン体増加率は顕著に増大している. このことは一定期間の高脂肪食摂取が胎児へのケトン休移行率を高めていると考えられる.
- 社団法人日本産科婦人科学会の論文
- 1968-10-01
著者
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