妊娠・分娩及び産褥期血清Cystine aminopeptidaseに関する研究
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概要
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妊婦血清にはOxytocin拮抗物質であるCystine aminopeptidase (CAP)が存在するが, その臨床的ないし生理的な意義に関しては不明の点が多い. 従つて著者は妊娠・分娩・産褥期における血清CAP活性につき一連の観察を行うと共に, 本酵素の臨床的意義並びに妊娠の持続・分娩発来機序との関係について考察を試みた. その結果, 妊娠・分娩・産褥期での血清CAPの消長では, 妊娠第6週で既に非妊時に比し有意の活性増加を示し, 妊娠の進行と共に略々胎盤の発育曲線と一致して活性は上昇し, 妊娠10ヶ月中期で最大値をとり, 予定日を超過するとやゝその値を減ずる. 妊娠末期から陣痛発来の前後では活性の動揺が激しく一定の傾向をみず, 分娩期では第I期より第II期で活性かやゝ減少する. 産褥期では, 対数曲線的に活性の低下を見た. 血清CAPの臨床的な意義では, 異常妊娠時の血清CAP活性が正常算を逸脱して異常高値ないし低値を示すことが多いこと, 並びに分娩・第II期血清CAP活性と妊娠持続期間, 胎盤重量, 児生下時体重との比較で関連性がみられたことから, 妊娠時の血清CAP測定が胎盤の機能並びに成熟度判定に利用し得ると結論する. この他, 妊娠早期診断, 双胎, 子宮内胎児生死の判定にも意義を認めた. 分娩発来機序に果す本酵素の役割については今日不明である. 陣痛発来前後での肘静脈血清CAP活性は対象によつて不定であり, 一見分娩発来機序とは無関係の如きであつた. しかし, 分娩時の子宮末梢血清CAPは遠隔部位(肘静脈血)に比し有意の活性低下がみられ, 又微弱陣痛群と正常群との血清CAP活性の比較では, 分娩時の活性に両者で差異をみず, 産褥時の活性減少率で微弱陣痛群が有意に高率であつた. この二つの新知見から, 本酵素が分娩発来機序に無関係ではあり得ないと推論した. 更に微弱陣痛例における知見から, 本症の成因について論及した.
- 社団法人日本産科婦人科学会の論文
- 1966-05-01
著者
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