子宮組織に於けるEstrogen及びProgesteroneの作用機構に関する研究 : I 殊に核酸合成の律速に関して
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概要
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Steroid hormoneのtargetに対する作用特異性を,そのgenetic regulationにより説明がなされる研究がひらけて来た.この論文はestrogen及びprogesteroneの子宮内膜組織に及ぼす生物作用を核酸合成の面より観察し,その律速性と,それに関与する蛋白質の意義並びに性格につき検討を加えた. 1. estrogen投与後の去勢子宮に於いて,先ずRNAの合成誘導が早期に起り,蛋白合成を介してDNA合成を促進する. 2. DNA合成に関与するthymidine kinase活性は,estrogen投与後18時間でpeakに達し,24時間目には低下した. 3. estrogenにより誘導されるnewRNAは,主として核に由来しr-RNAのprecursor, m-RNAを含むquick labelledRNAであつた.そして4〜6sRNAの合成は少ない. 4. estrogen処理後の子宮より抽出したRNAを,去勢ラットの子宮に注入すると,estrogen投与と同様な増殖性変化をもたらし,同時にthymidine kinase活性の上昇と著明なDNA合成の促進を認めた. 5. 子宮組織の蛋白合成をblockした際,18時間後にはestrogen投与の有無にかかわらず内膜上皮細胞の殆んどはDNA合成期へ移行した. 6. この結果からDNA合成開始の時期に或る種の蛋白(repressor protein)が強く抑制的に作用していると考えられるが,その蛋白のturn over rateは約16時間である. 7. progesteroneはestrogenにより促進されたDNA合成に対し強く抑制的に作用する. 8. progesteroneのDNA合成抑制効果は蛋白の合成をblockした際には現れない. 9. 成熟婦人の増殖期内膜は強いDNA合成を示し,分泌期内膜には殆んどそれが認められない. 以上の結果よりestrogenはRNA合成をinitiatorとして子宮組織を増殖せしめ,progesteroneはDNA合成の抑制を因果として分泌期即ち機能分化の方向付けを行うと解釈する.
- 1969-05-01
著者
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須川 佶
大阪大学微研
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芝 茂樹
大阪大学微生物病研究所臨床研究部婦人科
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垣田 守彦
大阪大微研:臨研婦人科:臨研感染病理
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森山 郁子
大阪大学微生物病研究所臨床研究部婦人科学教室
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垣田 守彦
大阪大学微生物病研究所臨床研究部婦人科学教室
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垣田 守彦
大阪大学微生物病研究所臨床研究部婦人科
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須川 佶
大阪大学微生物病研究所臨床研究部婦人科
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森山 郁子
大阪大学微生物病研究所臨床研究部婦人科
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