エストリオール抱合形の産生・代謝の解明とその臨床的意義について
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概要
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母体尿中エストリオール(以下E_3)測定し、胎児情報の一つとして広く利用されている。しかし、MEの進歩にともない、胎児情報源として、超音波診断法、NSTなどが利用されるようになり、尿中E_3値とNSTの結果との間にdiscrepancyの存在が指摘されるようになった。しかしE_3測定は、NSTと比較して、より多数の妊婦に施行が可能であり、スクリーニングの価値を持っていると考えられる。尿中E_3には、蓄尿の繁雑さと不正確さが伴うことから、血中E_3の測定がより正確に胎児情報を提供すると考えられるが、尿中のE_3が主に16-glucuronateであるのに比し、血中のE_3には多くの抱合体があり、どの抱合体を測定するのがより胎児情報としての価値が高いのか、抱合体間の代謝、排泄はどうなっているのか等についての知見は乏しい。これらの点の解明を目的として研究を行った。 1. 尿中におkるE_3抱合形の組成を検討した。正常妊婦ではE_3-Gが90%以上を占めるが、妊娠中毒症妊婦ではG-S分画が正常妊婦に比し有意に高値であった。 2. 血中E_3を分娩前より経日的に測定した。分娩前にはE_3は全抱合形とも減少傾向を示したが、分娩直前に総E_3は上昇するが、それは主に抱合形の上昇によるものであった。妊娠中毒症と糖尿病合併妊娠の1例では、G-S分画の低下が著明であった。 3. 分娩時の尿、母体血、胎盤後血、臍帯血のE_3の抱合形を測定した。臍帯血中では60%がSで、胎盤後血、母体血では50%以上がG-Sであり、尿中では80%がGであった。 4. 胎盤潅流実験では胎盤は加水分解能のみをもち、抱合能をもつ結果はえられなかった。以上の結果および家兎腎潅流の予備実験から、母体肝が主たる抱合の部位であり、腎では抱合形のclearanceを行っていると考えられる。
- 社団法人日本産科婦人科学会の論文
- 1987-06-01
著者
-
菅 整一
名古屋大学医学部産科婦人科学教室東海卵巣腫瘍研究会
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蜷川 映巳
教育問題委員会
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頓瀬 愛彦
名古屋大学医学部産婦人科学教室
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蜷川 映巳
名古屋大学医学部産婦人科学教室
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菅 整一
名古屋大学医学部産婦人科学教室
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