原因不明不妊症における精子・リンパ球混合培養試験とその意義
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概要
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原因不明不妊症に免疫的因子の関与するものが存在するか否か検索する目的で, 原因不明不妊症婦人32名, 経産婦人16名および未婚婦人47名に精子・リンパ球混合培養試験を行い, 以下の結果を得た.1)原因不明不妊症婦人, 経産婦人および未婚婦人のdonor精子に対するstimlation index(S.I.)は, それぞれ2.51±1.08, 2.25±0.79, 1.96±0.71であり, 未婚婦小の精子に対する反応は他の2群に比較して有意に低かつた(P<0.01).2)原因不明不妊症婦人および経産婦人の夫精子に対するS.I.は, それぞれ2.96±1.43, 2.44土1.24であつたが, その間に有意差はなく, また両群の夫精子とdonor精子に対する反応との間にも有意差を認めなかつた.3)原因不明不妊症婦人32名のうち14名に妊娠の成立をみた.妊娠非成立の18名と2群に分けてretrospectiveに, その夫精子およびdonor精子に対するS.I.をみると, 妊娠成立群では2.82±1.33, 2.71±1.25, 妊娠非成立群では, 3.07±1.50, 2.35±0.87であつたが, 両群とも夫精子とdonor精子に対する反応の間に有意差はく, また両群の夫精子に対する反応の間にも有意差を認めなかつた.4)原因不明不妊症婦人, 経産婦人および未婚婦人のPHAに対するS.I.は, それぞれ11.2±4.19, 9.94±2.38, 9.23±3.07であり, 原因不明不妊症婦人の反応は未婚婦人に比較して有意に高かつた(P<0.05).5)同時に行つた原因不明不妊症夫婦24組の細胞障害性試験で2例(8.3%)の陽性例があつたが, 2例とも妊娠成立をみた.以上のことから既婚婦人では, リンパ球はある程度精子に感作された状態にあり, 原因不明不妊症婦人では非特異的免疫能が亢進した状態にあることがうかがわれたが, 原因不明不妊症婦人が夫精子に強く感作されているために, その妊孕性が障害されていると考えさせられる証拠は得られなかつた.
- 社団法人日本産科婦人科学会の論文
- 1981-01-01
著者
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