無脳児妊娠における性ステロイドホルモン分泌機構の検討

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無脳児妊娠の胎児胎盤系における性ステロイドホルモン(性ホと略す)生合成機構を検討する目的で,6例の無脳児妊娠を対象に,母体血中および児の〓静脈血中Progesterone (P), Estrone (E_1), Estradiol (E_2), Estriol (E_3)をRadioimmunoassay (RIA)にて測定した.同時に児の病理解剖を行い,特に副腎皮質に関して検討を加えた.さらに本症妊婦1例にdehydroepiandrosterone sulphate (DHA-S)負荷試験を行つた.これらの結果,以下の成績が得られた. 1) 無脳児妊娠母体血中P値は正常値であつたが,Estrogen値は低下傾向を認めた.しかし全症例で極端な低値を示したのはE_3値のみであり,E_1およびE_2値は症例による変動が大きく,正常値に近い値を示した症例もあつた. 2) 無脳児〓静脈血中P値は正常値,E_1, E_2およびE_3値は全症例で低値を示した. 3) 無脳児妊娠母体に対してDHA-Sを負荷した結果,E_1およびE_2値の著しい増加率に比べ,E_3値の増加率は小さく,P値の変動は認めなかつた. 4) 無脳児の解剖所見を検討した結果,特に副腎皮質のfetal cortexの萎縮の程度に個体差があることに注目し,その占有率を容積比で表現すると2.2〜29.8%となり,非常にばらつきがあるが,妊娠週数,性などが共通した症例では,これらの値と母体血中E_1およびE_2値の間に正の相関を認めた.しかしE_3はfetal cortexの割合とはまつたく無関係に,全症例で著しく低下していた. これらの結果より,本症におけるEstrogen分泌機構の異常を考察すると,胎児副腎のfetal cortexの萎縮によるDHA産生の低下は,その程度に応じて主にE_1およびE_2の産生に影響を与え,従つてこれらの値には個体差があるが,さらに胎児肝あるいは副腎における16α-hydroxylation能の低下が共通に存在することにより,常にE_3産生が極端に低下することが示唆された.
社団法人日本産科婦人科学会の論文
1978-01-01

無脳児妊娠における性ステロイドホルモン分泌機構の検討

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