脾内卵巣移植からみた老齢動物の間脳-下垂体-卵巣系機能
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概要
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生殖能の加齢による停止から老死するまでの老齢雌動物の性内分泌機能を知る目的で,妊孕齢限界が450日齢,平均寿命が550日齢であるC57BL/6Jマウスを使用し,その脾内卵巣移植実験を通じて老齢動物の卵巣や下垂体の内分泌機能および性上位中枢のfeedback機構の有無について観察した. 1) 去勢した成熟齢マウスの脾内に,同系マウスの500日齢の老齢卵巣と100日齢の成熟齢卵巣を同時に並列移植し,宿主の去勢による豊かなgonadotrophin環境下で,移植された両卵巣が如何なる反応差を示すか観察した.移植成熟齢卵巣は移植3, 5, 15週を通じて腫大が著明で,卵胞の著しい発育と盛んな黄体形成を認めた.しかし同時に並列移植した老齢卵巣には成熟卵胞も,黄体形成も全く入られず,卵巣の変性吸収が著明であった. 2) 500日齢以上の雌老齢マウスで卵巣を除去した群と,卵巣をそのまま保存した群にわけてそれぞれに成熟齢卵巣を脾内に移植し,老齢下垂体からのgonadotrophinの影響について比較観察した.しかし卵巣の存否とは関係なく,脾内移植卵巣はいづれも移植後3〜5週で著しく腫大し,その反応は宿主が去勢成熟齢マウスの場合となんら変らず,著しい卵胞成熟と活発な黄体形成を認めた.一方,老齢宿主自らの卵巣は退行変性が強く,原始,未熟卵胞をまれにみるだけであった. 3) 老齢マウス卵巣を卵巣〓から除去して成熟齢卵巣を交換移植した後,成熟齢卵巣を脾内に移植すると,脾内卵巣は移植後3, 4, 6週での卵胞発育,黄体形成は老齢脾内移植卵巣に比して強く抑制される点が明らかとされた. 以上,雌マウスは加齢にともなってその卵巣は老化して機能は廃絶するが,老齢マウス性上位中枢は生涯にわたって排卵を導くに足るgonadotrophin分泌能を保有しており,卵巣ステロイズに対するfeedback機構も潜在的に保持され続けていることが推測された.
- 1977-05-01
著者
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