胎児無酸素症における血液2,3-Diphosphoglycerate濃度について
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概要
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胎児無酸素症における2,3-diphosphoglycerate(以下2,3-DPG)を含む解糖系代謝の変化を追究し,胎児組織呼吸に対する2,3-DPGの意義について検討し,以下の結果を得た. (1) まず正常例について1モルの血色素あたりの血液2,3-DPG濃度は,非妊婦人で1.09±S.D. 0.06,妊娠末期の婦人で0.99±0.12,分娩直後の母体で1.04±0.14,〓帯静脈で0,81±0.17,生後1時間の新生児で0,84±0.17Mであつた.母児間濃度勾配は胎盤呼吸において胎児側に有利に働くものと思われた. (2) 〓帯動脈血pHが7.21以上,乳酸値が3mM/l以下のoptimal群において〓帯動脈血2,3-DPGは,1モルの血色素あたり0.79±0.16Mで,これに対してApgar指数8点以上で〓帯動脈血pHが7.20以下か,乳酸値が3mM/l以上のものでは0.88±0.19Mと増加し,Apgar指数7点以下のものでは逆に0.65±0.08Mと減少していた.すなわち解糖系の胎児無酸素症に対する初期反応で2,3-DPGは増加し,ついでpHの減少とともに2,3-DPGは減少した. (3) 胎児〓帯血2,3-DPGはpH 7.21あたりで最も増加し,さらにアシドーシスになると減少した.成人の無酸素症における2,3-DPGの増加は呼吸性アルカローシスのためと推測されるが,胎児無酸素症ではこの代償機構が欠如するため2,3-DPGが減少するものと考えられた. (4) 胎児血2,3-DPG値はグリセロール,Buffer Base, pO_2, FFA値と逆相間し,母児間のpCO_2差,母児間の〔H^+〕差,乳酸値と相関した. (5) 母児の新鮮血と高濃度の無機燐およびブドウ糖のincubation実験において,2,3-DPGを含め解糖系諸基質値の変化は母児ともにほぼ同様の変化を認め,特に胎児赤血球に特異な解糖系機構を見出すことは不可能であつた. (6) ACD血による新生児交換輸血は赤血球内に著明な呼吸性兼代謝性アシドーシスを有する血球を供給するため,血球内2,3-DPGは著明に減少して新生児組織呼吸に有害な作用を及ぼすおそれのあることを見出した.
- 社団法人日本産科婦人科学会の論文
- 1977-05-01
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