子宮頚癌の筋層浸潤と予後との関係 : 頚部筋構築を基礎として
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概要
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子宮頚癌の予後判定には,従来より種々の因子が用いられ検討されているが,一般的に,内方発育を示すものの予後は不良であり,旁結合織への浸潤した進行癌予後が不良であるとされている.これに対し,筋層に被包されて発育する場合は比軽的予後良好であるとされている.癌巣が頚部の筋層を浸潤するか否かによつて予後に差があるのではなかろうか.という点に着目して,今回われわれは,癌の拡がりと予後との関係を追及するひとつの試みとして筋層浸潤との関係を取りあげた.子宮頚部の構築については,Danforth (1947, 1954)の研究があるが,われわれはこれを追試する目的で,胎児より新生児の子宮筋の発達過程を参考にして,成人子宮の頚部の結合織の部分と筋層の部分関係を検索した. この子宮筋の構築を基礎にして頚癌のうち術前照射を行なつた症例,0期およびIa期を除いたIb期33例,II期62例,III期14例の109例の剔出標本の癌巣の拡がりを精査した.その結果4群に分類し,各群と淋巴節転移との関係をみると,転移を認めたものは,A群:癌巣が結合織内に限局するものでは,53例中6例,B群:癌巣の発育先端部が筋層境界部に達するもの22例中6例,C群:明らかに筋層に浸潤のみられるもの16例中10例,D群:癌巣が筋層を破り旁結合織に及ぶもの18例中12例であり,ABCD群に移行するにつれて転移頻度は増加する傾向がみられた.また5年治癒率は,A群53例中53例,B群22例中17例,C群16例中3例,D群18例中2例であり,予後に明らかな差を認めた.即ち,癌巣が明らかに結合織内にとどまつていたA群と明らかに筋層浸潤のみられた群との間には淋巴節転移に有意の差を認め,その予後にも明らかな差を認めた.従つて,剔出子宮について癌巣の最大浸潤部位との筋層との関係を追及することは,術後診断として予後を予想する際に,有意義であると思われる.
- 社団法人日本産科婦人科学会の論文
- 1977-05-01
著者
-
林 茂一郎
佼成病院産婦人科
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佐橋 徹
静岡県立中央病院産婦人科:東海大学医学部産婦人科学教室
-
塩塚 幸彦
東海大学医学部産科婦人科学教室
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林 茂興
東海大学医学部産科婦人科学教室
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林 茂一郎
東海大学医学部産科婦人科学教室
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佐橋 徹
東海大学医学部産科婦人科学教室
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小林 一夫
東海大学医学部産科婦人科学教室
-
藤井 成彬
函館協会病院産婦人科
-
藤井 成彬
東海大学医学部産婦人科学教室
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