子宮頚部扁平上皮癌の核小体の研究,特に計測的比較から見た放射線照射による早期変化
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概要
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子宮頚部扁平上皮癌につき,比較検討の焦点を旁基底細胞型癌細胞(癌細胞と略)にあて,正常扁平上皮の旁基底細胞(正常細胞と略)と比較しながら,計測的立場から核小体の検索を行い,更に放射線照射による早期変化に注目した結果,次の如き結論を得た. 1. 癌細胞の核小体の数は平均1.51で,正常細胞の1.17に比し多く,癌の組織型により軽度の増加程度の差はあるが,癌細胞では正常細胞より核小体の数が明らかに多いと認められる. 2. 核小体の位置及び形態は,癌の組織型により若干の差はあるが,正常細胞に似て中央に位置し,円形或は類円形を呈することが基本であり,あまり明瞭な差異があるとは云い難い. 3. 核小体の大きさは,histogramの上でも,また平均計測値の上でも,癌細胞は正常細胞に比し大きく,平均1.58倍を示し,組織型分類の上では小細胞性未分化型癌より大細胞性非角化型癌で大型化が明らかであると認められる. 4. 放射線照射による癌細胞の核小体数の変化としては,500radで既に増加の傾向が認められ,線量の増加と共に明らかとなるが,特に小細胞性癌の方が大細胞性癌より認識しやすい. 5. 癌細胞の核小体の位置及び形態は,いずれの癌型でも中央に位置し円形或は類円形を示すことが多く,放射線照射1000radまでは著差は認められない.しかし2000rad前後に達すると,核小体の形態が不正形になる傾向があると認められる. 6. 放射線照射による癌細胞核小体の大きさは,histogramの上でもまた平均測定値の比較の上でも,2000radまで大型化してゆく傾向が認められる.特に小細胞性癌では大細胞性癌に比し腫大化が著しい. 7. 以上の如く,放射線照射による核小体の変化として最も認識しやすいのは核小体数の増加及び腫大であると考えられ,癌の放射線病理の上で重要であると共に,線感受性診断の上で有用と思われる.
- 社団法人日本産科婦人科学会の論文
- 1976-08-01
著者
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