更年期婦人の腰痛並びに脊椎圧迫骨折と骨密度との関係について
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概要
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腰痛は厚生省の退行期骨粗髭症診断基準の一項目に加えられており, 本邦においては退行期骨粗髭症を診断するに当たり重要な臨床症状の一つと考えられている. また骨粗髪症は, 他の退行期疾患同様, 一旦病態が確立すると治療抵抗性であるため, 予防に勝る治療法はないといわれている. すなわち, 60歳以降になると骨粗髭症は確立してしまうので, 50歳前後において病態を把握し, 予防や初期治療を行うことが重要となる. そこで本研究では, 50歳前後の女性における腰痛の有無と骨密度bone mineral density (BMD)との関係, および骨粗髭症の合併症として重要な脊椎圧迫骨折の有無とBMDとの関係を検討した. さらにその骨折者のBMDから, 非骨折者の将来の圧迫骨折の危険度の指標となる骨折閾値を求めた. 中高年を対象とした特殊外来である "中高年健康維持外来" 受診者400名(平均約50歳)を対象として, 腰痛の有無と程度を問診のうえ, 胸・腰椎X-Pを撮影し, 脊椎圧迫骨折の有無を判定すると同時に, microdensitometry/multiscanning (MD/MS)法, dual energy X-ray absorptiometry (DXA)によりBMDを判定した. その結果, 腰痛の有無およびその程度ともBMDとの間に有意な相関を認めなかった. しかし, 胸・腰椎にX-P上圧迫骨折を認めた15例のBMDは非骨折例のそれに比し有意な低値を示した. 以上から, 閉経後および卵摘後骨粗髭症の診断上, 臨床症状として腰痛は重要視すべきではなく, 圧迫骨折が重要であることが示された. さらに骨粗髭症の診断に当たり, 正確なBMDの測定と共に, 胸・腰椎X-Pにより圧迫骨折の有無を把握することが重要であることが示唆された. また圧迫骨折例15例から求めたL_<2-4> BMD骨折閾値の90パーセンタイルは0.982g/cm^2であり, その値を非骨折例に当てはめると, その48.3%がこの値以下のBMDを呈しており, これらはこの値以上のBMDを呈する例より, 将来の骨折の可能性が高い群といえる. しかし, 骨折を予防するための対象者の選別に用いるためにはさらなる検討が必要と思われた.
- 社団法人日本産科婦人科学会の論文
- 1995-01-01
著者
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