マウス成熟卵および初期胚分化における卵由来cyclooxygenaseの意義とそのontogenyに関する研究
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概要
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受精, 着床周辺期において卵自身の機能調節が重要な生理学的意義をもつことは疑う余地がないが, その詳細については全く明らかにされていない. 我々はこの時期におけるprostaglandin (PG)合成阻害が正常な受精-着床を抑制することより, 卵-胚におけるPG合成が重要な意味をもつと考え, PG合成律速酵素cyclooxygenase (以下COX)の存在とその機能的意義を成熟卵及び初期胚において検討した. その結果: 1. ヒアルロニターゼ処理した成熟卵80個, 受精卵80個を用いてWestern blotによるCOX蛋白検出を行った結果成熟卵, 受精卵とも67KDのCOX蛋白が検出された. 2. 成熟卵100個,受精卵100個よりreverse transcription-Polymerase Chain Reaction (RT-PCR)法によってCOXmRNAの検出を行った.陽性コントロールは, 顆粒膜細胞を用いた. その結果成熟卵, 受精卵ともCOXmRNAは検出されなかったが, β-actinは検出された. 顆粒膜細胞あるいは顆粒膜細胞付着成熟卵ではCOXのメッセージが検出された. 3. 成熟卵にCOX単クローン抗体, ヒツジCOXで吸収したhPES01及びマウスIgG2aを各ヘ8pl細胞質内へmicroinjectionした. 穿刺の影響はsham刺入をコントロールとして検討した. その結果hPES01をmicroinjectionした卵はその33%しか2細胞期胚に分化せず(n=23), COX吸収hPES01注入では66%が2細胞期胚になり(n=16), マウスIgG2a注入した卵の64%が2細胞期胚まで成長した(n=21). sham刺入のみは50%が2細胞期胚になった(n=16). これらのχ^2検定では, hPES01と比較して吸収実験はp<0.05, IgG2a実験p<0.05, sham実験p<0.001といずれも有意に高率な2細胞期胚への成長が観察された. 以上より成熟卵, 受精卵ともそのooplasm(卵巣)にCOXの存在が確認された. またmicroinjection の実験結果より卵質内のCOXの存在, すなわち正常なPGs合成が受精卵の分化に関わっていると推測された. また受精の直前(成熟卵), 直後(初期胚)のいずれにおいてもCOXmRNAが検出されなかったことより, 受精周辺期においては卵-胚中ではCOX遺伝子のtranscriptionはなく, それ以前より卵質の中に存在する卵由来COX活性に依存していることが明らかにされた.
- 社団法人日本産科婦人科学会の論文
- 1994-04-01
著者
-
早川 智
日本大学医学部産科婦人科学教室
-
佐藤 和雄
日本大学医学部産科婦人科学教室
-
坂元 秀樹
日本大学医学部産婦人科
-
高見 毅司
日本大学医学部産婦人科
-
高見 雅司
日本大
-
高見 雅司
日本大学医学部産科婦人科学教室
-
早川 智
日本大
-
佐藤 和雄
日本大学医学部産婦人科
-
坂元 秀樹
日本大学医学部 産婦人科
-
早川 智
日本大学医学部産婦人科学教室
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