女性***悪性腫瘍由来培養細胞株の糖脂質組成に関する研究
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概要
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悪性腫瘍の細胞表面のフェノタイプの一つとして糖脂質に注目し, 組織学的由来の異なる各種女性***悪性腫瘍由来培養細胞株におけるその組成を分析, 比較した. (1) 7種類の女性***悪性腫瘍由来培養細胞株のうち, 3種類の子宮体部腺癌細胞株(SNG-II, SNG-M, HEC-108)においてのみ, 硫酸化糖脂質であるラクトシルスルファチドが検出された. ラクトシルスルファチドの含量と主要なガングリオシドであるGM_3の含量の比は, 3種の子宮体部腺癌細胞株の間で異なつていた. ヌードマウスへの移植腫瘍で中分化型腺癌の形態を示したHEC-108では, ラクトシルスルファチド含量は0.19μmol/g・dry weightと高値を示し, GM_3の約3倍の濃度であるのに対し, 低分化型腺癌の形態を示したSNG-II, SNG-Mでは逆にGM_3の濃度の方が高値であつた. 一方, 子宮体部腺癌細胞株では, 中性糖脂質組成に有意な差は認められなかつた. (2) 各細胞株より抽出した糖脂質に関して, I型糖鎖及び血液型物質(A, B, H, Le^a, Le^b型)及び血液型関連抗原(Le^x, Le^y)に対する抗体を用いたTLC免疫染色による検討を行つた. I型糖鎖の発現はどの細胞株でも認められたが, シアリルI型糖鎖は5種の癌細胞株に比して2種の肉腫細胞株において, より高濃度に発現されていた. またフコースをもつ他の血液型物質(A, B, H, Le^a, Le^b型)及び血液型関連抗原(Le^x, Le^y)は癌細胞株においてそのいずれかの発現が高頻度であつたが, 肉腫細胞株ではそれらの発現が低頻度であつた. 以上より, ラクトシルスルファチドの発現は3種の子宮体腺癌由来培養細胞株に共通の特性の一つであることが示され, さらに子宮筋肉腫及び卵巣筋肉腫細胞株においてI型あるいはII型糖鎖末端へのフコース転移能が低下している可能性が示唆された.
- 社団法人日本産科婦人科学会の論文
- 1993-02-01
著者
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