子宮頚癌組織におけるHLA Class II抗原の発現およびリンパ球浸潤に関する免疫組織学的検討
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概要
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子宮頚癌組織におけるHLA Class II抗原の発現の有無と間質リンパ球浸潤との相関について免疫組織学的に解析し, 患者予後との関連についても検討した。子宮頚癌患者36例を対象とし, HLA-DR のmonomorphic determinantを識別する単クローン抗体とそのpolymorphic determinantの一つHLA-DR1/2を識別する抗体 (HU-30) とを用い, 免疫組織染色を行った。また浸潤リンパ球を各種単クローン抗体を用いて免疫組織学的に同定し, 以下の結果を得た。1) HU-30の反応性から36例中26例 (72.2%) がHLA-DR1/2陽性の患者と判定された。2) この26例において, 癌細胞がHLA-DR陽性を示したものは21例 (80.8%) であり, 陰性のものが5例 (19.2%) あった。3) HLA-DR陽性21例のうち, HLA-DR1/2も陽性を示したものは12例 (46.2%; A群) で, 陰性のものは9例 (34.6%) であった。4) HLA-DR1/2に関して, 間質が陰性で癌細胞にのみ陽性である症例は存在しなかった。以上より, 子宮頚癌細胞においてHLA-DRの発現が全くないか, HLA-DRのpolymorphic determinantを欠如する症例が合計14例 (53.8%; B群) あった。5) 癌病巣周囲に近接して浸潤するリンパ球は主にT細胞であり, その亜群はLeu-3a細胞 (helper/inducer T cell) がLeu-2a細胞 (suppressor/cytotoxic T cell) に比し優位であった。6) A群ではB群に比し, T細胞とその亜群及びIL-2-receptor陽性細胞の浸潤程度が強かった。7) A群とB群では, 進行期, 組織型, 癌浸潤度及びリンパ節転移の有無に差はないが, 無再発率は前者に高く, 予後良好であった。以上のように, 子宮頚癌細胞のHLA Class II抗原の発現の有無とこれに対する宿主の間質リンパ球浸潤の程度は, 患者の予後を推測するうえで重要な指標となり得ることを指摘した。
- 社団法人日本産科婦人科学会の論文
- 1992-03-01
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