心室中隔欠損症における胎児循環動態に関する検討 : 心腔内血流動態を中心に

概要

論文の詳細を見る
出生前に診断された9例の胎児心室中隔欠損症 (VSD) について, カラードプラ法を用いて心腔内血流動態を観察するとともに, パルスドプラ法を用いて左右心室間のシャント血流, 上行大動脈, 肺動脈, 下大静脈, 及び房室弁通過血流を測定した。更に, Bモード法を用い心臓の諸計測を行い, Mモード法にて心駆出率を測定した。各測定値を当科における正常胎児の値と比較検討し, 以下の結果を得た。(1) 全症例で左右心室間にシャント血流を認めた。(2) 合併心奇形を伴わないVSD 4症例におけるシャント血流はすべて2方向性であった。このうち3例の正常発育胎児では収縮期に右室→左室, 拡張期に左室→右室に流れ, 収縮期最高血流速度は各々61 cm/s, 42 cm/s, 68 cm/sであった。severeなIUGRを呈した残りの1例では収縮期に左室→右室, 拡張期に右室→左室に流れ, 収縮期最高血流速度は48 cm/sであった。(3) 合併心奇形を伴ったVSD 5症例におけるシャント血流は2例が1方向性, 3例が2方向性であった。これら3例ではすべて収縮期に左室→右室, 拡張期に右室→左室に流れた。(4) Ebstein奇形, 三尖弁閉鎖不全合併症例及び大動脈騎乗, 肺動脈狭窄, 僧房弁閉鎖不全合併症例では心拡大, 駆出率の低下及び下大静脈逆流波の増大を認め心機能不全の状態と考えられたが, 両大血管の血流速度は前者では高値を, 後者では低値を示した。以上より, 胎児期には心室収縮期圧は左室に比べ右室が高いが, その違いはわずかであり両心室はほぼ等圧と考えられた。また, VSDでは1方向性の血流や, 2方向性でも血流方向と心収縮期時相の関係が正常発育胎児の場合と異なる例では, 心腔内圧の変化が推察され, 他の心血管系異常の存在が示唆された。
社団法人日本産科婦人科学会の論文
1991-12-01

心室中隔欠損症における胎児循環動態に関する検討 : 心腔内血流動態を中心に

スポンサーリンク

概要

著者

関連論文

スポンサーリンク