分子動力学法による融解・結晶化・ガラス転移の実験 (<特集> 物性における計算物理)
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概要
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分子動力学法 (Molecular Dynamics-MD と略す) の一応用例として, 定圧・定温 MD による融解, 結晶化, ガラス転移の計算機シミュレーションの結果を紹介する. Lennard-Jones (LJ) 型の対ポテンシャル近似を採用し, 具体的な物質としては LJ 対法則が良い近似とされているアルゴンを想定する. 低温の fcc 結晶を加熱すると 110K で融解する. 一方, 高温の LJ 液体を冷却すると, 冷却速度が適当に小さい場合には 60K 以下で結晶化が起こる. 結晶化の初期は比較的遅い速度で, 終期は比較的速い速度で成長が進む. 加熱・冷却の過程で大きな履歴が観測される. 冷却速度が十分大きいと, 結晶化は起こらず, ガラス転移を経てガラスが得られる. 結晶化とガラス化を隔てる臨界冷却速度 q_c は, アルゴンの場合, 4×10^<10>K/s<q_c<4×10^<11>K/s の範囲にあることがわれわれのシミュレーションから予測される. ガラスを十分長くアニールすると結晶化の見られることもあるが, 小さな冷却速度で作製されたガラスは安定で, 容易に結晶化しない. 種々のパラメターによるミクロな構造解析が可能であり, 結晶化やガラス転移に関して, マクロな物理量からは望めない豊富な情報が得られる.
- 1985-11-05
著者
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