幼稚園男児の女性役割り行動に及ぼすモデルの影響
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概要
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本研究は,被験児(幼稚園男児)の女性玩具に対する反応に,次のモデル群のいずれがより強い制止効果を示すかを検討するために行なわれた。第1のモデル群(N-群)の幼児は,中性玩具で遊んでいる男性成人モデルに2分間接する。このモデルは,言語表現を用いない。第2のモデル群(V-群)の被験児は,女性玩具を回避する理由を言語化するモデルを観察する。このモデルは,中性玩具で遊ばない。第3のモデル(NV-群)は,N-群,V-群のモデルの動作,言語行動をすべて表現する。以上のモデル群のほかに,モデルを観察しない統制群が用いられた。モデル群の幼児はモデルの行動を観察した直後,統制群は観察なしで,女性玩具と中性玩具の置かれている部屋で7分間の自由遊びの時間が与えられた。被験児は一面視鏡をとおして10秒ごとに観察され記録された。したがって各被験児は42回観察された。観察の結果2種の測度が算出された。潜時は,何回目の観察のときに幼児が女性玩具に視線を向け,接近し,接触したかによって決められる。42回の観察中に幼児が女性玩具に視線を向け,接近し,接触した回数で第2の測度,女性反応数が決められた。 主な結果は次のとおりである。 1) 3モデル群ともに,女性玩具に接触するまでの潜時は統制群より長かった。さらに,NV-群の潜時はN群,V-群のものより長く,N-群とV-群間には差がみられなかった。 2) 3モデル群が女性玩具に接近し接触した回数は,統制群より少なかった。NV-群の幼児は,N-群,V-群の幼児よりも女性玩具に反応した頻度は少なかったが,3モデル群間に有意な差は見られなかった。 これらの結果は,1) 女性的反応を抑制することを言語化するモデルを観察することにより,2) あるいは,女性的反応に拮抗する他の反応を採用するモデルを観察することにより,被験児(男児)に女性的反応を抑制する傾向が獲得されることを示唆するものと解釈された。
- 日本教育心理学会の論文
- 1968-03-31
著者
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