言語的思考における抽象作用の発達的研究 : I : 機能水準・発達段階の探求
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概要
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言語的思考における抽象作用の機能水準,発達段階探究のため,2物間ならびに3物間それぞれにおいての,共通点抽出の実験を,幼稚園児から中学1年に至る648名(男子323名,女子325名)に実施し,その横断面的発達と縦断面的発達とについて検討し,つぎの結果を得た。(1)言語的思考における抽象作用の機能水準として,概念的抽象,前概念的抽象,知覚的抽象,非解答の4つが区分される。 概念的抽象は,与えられた概念(項目,材料)を含む,より上位の類概念によって,類似性(共通点)を構成,指摘するもの。 前概念的抽象は,与よられた概念(項目,材料)間に共通な機能,構造,用途,成分,発生・形成過程,材料などによって,類似性(共通点)を構成,指摘するもの。 知覚的抽象は,与えられた概念(項目,材料)間に共通な色,形,部分的類似,場所的近接,感覚などによって,類似性(共通点)を構成,指摘するもの。 非解答は,与えられた概念(項目,材料)間の類似性(共通点)が構成,指摘されないもの,および無解答。 発達的にみると,一般的にいって, (2)概念的抽象は,学年(年令)の進みとともに増加する。 (3)前概念的抽象は,幼児期から,概ね小学1∼2年ごろまで増加し,以後減少する。 (4)知覚的抽象は,学年(年令)の進みとともに減少する。 (5)非解答は,幼児期から,小学1年,2年生にかけて激減し,以後漸減を示す。 (6)上のような機能水準の発達,移行は,横断面的考察によっても,また縦断面的考察によっても確められ,両者間に矛盾がない。 (7)幼児においても,概念的抽象の可能なものが見いだされ,逆に中学1年においても,概念的抽象の不可能なものが存在する。 (8)3物間の抽象は,2物間の抽象に比し,一般に,抽象の機能水準を高める。 (9)従来からの通説に反し,3物間の抽像は,2物間の抽象に比して困難ではない。従来の3物間の抽象の困難性は,与えられる材料の数の増加とはまったく異なった,他の要因によるものである。
- 日本教育心理学会の論文
- 1967-09-30
著者
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