精神薄弱児の類型学的研究の現状(その1) : 内因性・外因性精薄児をめぐって
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概要
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以上,精薄児の類型学的研究の1つとして内因性・外因性精薄児の心理学的研究を一瞥してきたが,精薄児の内因性・外因性の判定・診断は研究者によってまちまちである.例えば,外因性精薄児としてLewis(70)は器質的障害により惹起されたものを,Larsen(64)は後天性神経学的症候群(acquired neurological symptoms)を有する器質性をあげているが,Strauss(109)は脳損傷,神経筋原の障害の他に,特に,心理学的知覚・思考・行動に異常を示すものを規定群に加えている.精薄児の外因を発達的にみて,出生後の脳損傷・出産損傷・胎児損傷さらに,最近では放射線・麻薬・アルコール・避妊薬などによる胚珠損傷も加えられるが,又損傷程度,損傷局部などによっても,その行動上にあらわれる特性は異なることが考えられる.しかし最近に至る研究の大方は,外因性精薄児の知覚・思考・パーソナリティになんらかの異常が認められ,このように,いわば現象面での異常性が脳の器質的障害に起因していることが検証されるなら,やがては,心理学的診断も,内因性・外因性の診断に一枚加わることも予想されるのである.そして,このことはLashley(65),Harlow(50),Pribram(84),Blum(20)らが試みているような動物実験とも相俟って,推し進められるべきものである.又,精薄児の発生原因による類型とは別に,彼らの「行動の類型」も問題とされる.三木(77)の調査によると,例えば岩見沢児童相談所では,精薄児をその行動特徴から,多弁他動型・興奮型・緘黙型・遅鈍型に,滋賀相談所では温順型・燥型・うつ型・反社会型などに分類しているが,こうした類型は原因によるものか環境的なものによるか,など興味ある研究課題である.
- 1960-09-30
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