カテゴリに基づく帰納推論における専門性の影響
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概要
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本研究の目的は, カテゴリに基づく帰納推論の確証度判断における専門性の影響を検討することである。実験1では, 生物学を専攻する博士課程大学院生に鳥類の病気についてのカテゴリに基づく帰納推論の確証度を判断させた。Osherson, Smith, Wilkie, Lopez & Shafir (1990)などの研究は, 文科系の大学生が被覆原則に基づいて確証度判断を行っていることを示していたが, 生物学の大学院生は, 一般帰納・特殊帰納ともに分散原則に基づいて確証度を判断していた。この結果が, 生物学の専門性によるものかを検討するために, 実験2では, 数学・物理学・心理学を専攻する博士課程の大学院生に一般帰納の確証度を判断させた。その結果, 同一大学の同一専攻の大学院生であっても, カテゴリに基づく帰納推論における確証度判断の仕方に違いが見られた。実験1の生物学専攻の大学院生も含めて, 全般的に分散方略に基づく確証度判断を行う被験者が多かったが, 被覆方略に基づく確証度判断を行う被験者も見られた。よって, カテゴリに基づく帰納推論における分散方略は生物学や自然科学の専門性の結果と考えるよりも, より広く研究者一般に見られる帰納推論の方略であると考えることができる。ただし, 確証度判断を分散原則で行うか, 被覆原則で行うかを決める決定的な要因となる信念や知識が何かについては, さらに研究を進める必要がある。
- 日本教育心理学会の論文
- 1999-03-30
著者
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