民族呼称とイメージ : 「イヌイト」の創成とイメージ操作(<特集>自己イメージと抵抗 : 採集狩猟社会を事例に)
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概要
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ドミナント社会が採集狩猟社会に対して描いてきたイメージは表裏一体をなすダブルイメージである。残忍, 蒙昧, 幼稚, 未開などの否定的なイメージ。無垢, 純粋, 自然とともに, などの肯定的なイメージ。いずれも「文明」の対局に位置づけられ, 政治, 経済, 文化, 法のあらゆる面で採集狩猟民を抑制し統治するための策略であった。しかし, 近年, 政治社会的な地位を向上させる運動, そして新たに確立した社会的, 法的地位に関連して, 採集狩猟民が自らイメージ作りを積極的に行なうようになった。こうしたイメージは政治運動に使われると同時に, 新たなアイデンティティーのエスニック・マーカーに動員されることがある。本稿では, カナダの「エスキモー」が「イヌイト」に替わっていくプロセスにおいて, 狩猟活動が意識されざる日常的な行動から, イヌイトのアイデンティティーを表象するイメージになっている事例を中心に, イメージをめぐる政治的な側面をとり上げる。
- 日本文化人類学会の論文
- 1998-09-30
著者
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