雄性不稔細胞質及び正常細胞質由来のイネミトコンドリアDNAにおける遺伝子構成の差異
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概要
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F_1種子を作出する際,極めて重要な遺伝形質の1つである,細胞質雄性不稔(cms)の機構は,いまだ不明である.これまで数種のイネ雄性不稔細胞質と正常細胞質を比較することにより,両細胞質由来のミトコンドリアDNA(mtDNA)に差異のあることが示されてきた(YAMAGUCHI and KAKIUCHI 1983,KAD0WAKI et al. 1986, SHIKANAI et al.1987,NAWA et al. 1987,MIGNOUNA et al.1987). 本研究では,両細胞質のmtDNAの差異を遺伝子レベルで分析し,cmsの原因を探るため,合成ヌクレオチドを用いたサザンプロット解析を行った.また6系統の雄性不稔細胞質由来mtDNAにおける,遺伝子構成の比較もおこなった.まずDNAシンセサイザーを用いて,cytochrome oxidase subunit II,cytochrome oxidase subunitI,ATPase subunit9,F_1-ATPaseαsubunit,apocytochrome b (cob),ATPase subunit 6(atp6)遺伝子の一部(21〜26mer)を,化学合成した.雄性不稔細胞質cms-Boと正常細胞質よりmtDNAを単離し,制限酵素PstI,HindIII,EcoRI,BamHI,BglIIによる切断を行い,上記6種のプローブによるサザンプロット解析を行った.atp6及びcobプローブを用いた場合,両細胞質由来のmtDNAは異なるバイブリダイゼーションパターンを示した.一方,他の4種のプローブを用いた場合,両細胞質由来のmtDNAは同一のパターンを示した.また。ms-Bo細胞質由来のmtDNAは正常細胞質由来のそれに比べ,atp6,cob遺伝子を2倍コピーもつことが強く示唆された.これらのことは。ms-Bo細胞質のmtDNAにおいて,atp6,cob遺伝子のごく近傍で遺伝子の組み換え及び増幅がおこったことを示唆している。さらに6種の雄性不稔細胞質,cms-Bo,cms-UR89,cms-UR93,cms-UR 102,cms-UR104,cms-UR106におけるatp6及びcob遺伝子構成について,サザンプロット法で解析した.cms-UR104 細胞質においてもcob遺伝子の増幅が生じており,また制限酵素パターンでは区別できない。cms-BomtDNAと,atp6遺伝子のバイブリダイゼーションパターンが異なっていた.6種雄性不稔細胞質由来のmtDNAは,遺伝子構成において,多様であることが明らかとなった.
- 1989-06-01
著者
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門脇 光一
農業生物資源研究所
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原田 久也
千葉大園芸
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原田 久也
農業生物資源研究所:(現)千葉大学園芸学部
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原田 久也
農業生物資源研
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門脇 光一
(独)農業生物資源研究所
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門脇 光一
農業生物資源研
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