異なる年次および地域で生産されたブドウ果実間のアミノ酸組成の類似性
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概要
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主に西南暖地の8地域で生産された生食用ブドウ4品種(Campbell Early, 巨峰, マスカット・ベーリーA, ネオ・マスカット)について, 果汁中の遊離アミノ酸を1992年と1993年にわたって分析した.各品種とも総アミノ酸含量は1.0から1.8mMの範囲にあった.各品種について, 異なる環境(年次および地域)で生産された果実間のアミノ酸組成の類似性をパターン類似率(PSI)を用いて比較した.PSIの計算では, A環境のアミノ酸組成をベクトルOA(a_<Asp>, a_<Thr>, …, a_<Arg>=a_1, a_2, …a_n), B環境のアミノ酸組成をOB(b_<Asp>, b_<Thr>, …, b_<Arg>=b_1, b_2, …, b_n)と表現し, n次元空間におけるOAとOBの作る角度[余弦, cosθ=[numerical formula]]をPSIとした.アミノ酸組成(パターン)について, PSIの値と類似程度の直感的な判断は一致した.また, 統計的に有意差が検出されたアミノ酸の数が増加するに従って, PSIの値は低下する傾向が認められた.PSIに着目してアミノ酸組成の類似度を区分すると, 0.980以上では"類似度が高い", 0.979以下では"類似度が低い"と考えられた."類似度が高い"アミノ酸組成の出現頻度は, 'Campbell Early'75%, 'マスカット・ベーリーA'73%, 'ネオ・マスカット'72%, '巨峰'69%であり, 全環境間の組合せ(_nC_2)の約7割を占めることから, 年次あるいは地域が異なってもアミノ酸組成には高い類似性があることを示唆した.供試4品種間のアミノ酸組成は相互に異なっており, 福岡農総試における2ヵ年の平均値を用いて品種の代表値とした場合, 'Campbell Early'を対照としたPSI値は'巨峰'0.959, 'マスカット・ベーリーA'0.899, 'ネオ・マスカット'0.753であった.'巨峰'と'マスカット・ベーリーA', '巨峰'と'ネオ・マスカット'間および'マスカット・ベーリーA'と'ネオ・マスカット'間のPSI値はそれぞれ0.979, 0.882および0.933で類似度が低かった.これらの結果から, ブドウ果実のアミノ酸組成はアンペログラフィー(ブドウ分類学)における有用な指標になり得ると結論した.
- 園芸学会の論文
- 2002-05-15
著者
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