コムギ種子の発達段階の再分類
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概要
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種子発達過程において,特異的に発現する遺伝子の研究が進みつつある、これらの研究において,種子の発達を概括的に捉える必要がある.現在まで,コムギ種子の胚,胚乳の発達について多くの研究があるが,それらは各組織の詳細な組織的な研究であり,種子の発達段階を同定するのに適していない.現在までよく使われている発達段階は,胚乳の発達から推定する前乳熟期(watery),乳熟期(mi1ky),糊熟期(soft dough),黄熟期(harddough),完熟期(ripe),枯熟期(deadripe)である.Rogersand Quatrano(1983)は,コムギ種子の発達を再度検討し,種子の発達段階を5段階に分けた. 我々は,異なる発達段階の種子の組織標本を比較検討し,以下の6の発達段階に分けるのが適切と推定した.発達段階1(開花から開花後5日),胚は球状,胚乳の発達は急速である(Fig.1A).種子は4mm以下(Table2)で,白緑色(Fig.4A,B).発達段階2(開花後5日から開花後10日),胚はembryo axiと胚盤に分化する(Fig.1B)、胚乳の発達は急速(Fig.4C)、発達段階3(開花後10日から開花後15日),胚盤が伸長する(Fig.1C,Table2).種子の乾重の増加が最も急速(Fig.2B).胚乳は乳熟期.発達段階4(開花後15日から開花後20日)第一葉,根,子葉鞘がembryo axisで分化する(Fig.1D).胚乳の大きさは最大になる.種子はみずみずしい緑(Fig.4D).発達段階5(開花後20日から開花後30日),胚の分化が更に続き(Fig.1E),胚の乾重の増加が最も盛んである(Fig.2B).胚乳の乾重の増加も第2のピークを示す(Fig.2B).胚乳は糊熟期.種子は黄色くなりはじめる(Fig.4E,F).発達段階6(開花後30日から開花後50日),種子は乾燥をはじめ,褐色に変わる.黄熟期,完熟期,枯熟期をふくむ(Fig.4G,H)
- 日本育種学会の論文
- 1994-06-01
著者
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