イネの浮遊葯培養において培養容器の蓋をパラフィルムで封じないことによるカルス形成率および植物体再分化率の向上
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概要
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本研究ではイネの浮遊葯培養において,パラフィルム不使用が培養効率におよぼす影響を明らかにして培養法の改善に役立てようとした.生理的に均質な葯を供試するため,ポットに密植栽培したイネの主稈穂の特定穎花から1核中期〜後期の花粉を含む葯を採取し,1区当たり1000葯前後を培養した.カルス誘導期およびカルス増殖期のシャーレ,植物体再分化期の試験管に対して,それぞれ独立にパラフィルムで封じた区と封じなかった区を設け,両区の培養効率を比べた.カルス誘導期におけるパラフィルム不使用の効果は,パラフィルム不使用のシャーレでも培地のコンタミネーションや蒸発を起こさない二重チャンバー法によって実験した.カルス誘導期の実験では水稲品種「きらら397」,カルス増殖期の実験では水稲品種「キタアケ」,植物体再分化期の実験では水稲品種「キタアケ」および「キタアケ」の葯培養から復元された10系統を供試した.その結果,カルス誘導期のシャーレをパラフィルムで封じないで培養すると封じて培養した場合に比べて,カルス形成率は実数値で212%(比率で1.6倍)〜289%(3.8倍)増加したが,パラフィルム不使用区のシャーレで形成されたカルスの緑色植物再分化率はパラフィルム使用区のそれに比べてやや低かった.カルス増殖期のシャーレをパラフィルムで封じないで培養すると,緑色植物再分化率が8%(1.1倍)増加した.さらに植物体再分化期の試験管をパラフィルムで封じないで培養すると,緑色植物再分化率が8%(1.3倍)〜9%(1.2倍)増加した.以上の結果より,イネ葯培養効率を簡易に高める手段として,プラスチックシャーレや試験管の蓋をパラフィルムで封じないで培養することを推奨する.
- 日本育種学会の論文
- 2003-06-01
著者
-
石村 櫻
拓殖大学北海道短大
-
木下 厚
元拓殖大学北海道短大
-
佐竹 徹夫
元拓殖大学北海道短大
-
木下 厚
拓殖大学北海道短期大学
-
岡本 吉弘
拓殖大学北海道短期大学
-
佐竹 徹夫
拓殖大学北海道短期大学
-
岡本 吉弘
酪農学園大学
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