タバコ花粉における異る染色体数の葯培養による植物体形成および受精に与える影響

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植物には両親の染色体数が異るため交雑不和合性を示す場合が多い。母本に染色体数の多いもの,逆に少いものを選べば受精に成功する両型がある。Nicotiana tabacum(cv.Wisconsin 38)の2倍体(2n=48)と各種染色体数のタバコの相反交雑を試みると4倍体,3倍体や染色体数73,67のような高染色体数のものは2倍体母本と交雑不可能であるがその逆交雑は全て可能であった。また59および54のような比較的低染色体数の場合は2倍体母本とも交雑可能であった。この場合受精する花粉の染色体数は30までであった。また4倍体の葯培養により得た染色体置換型と考えられる2倍体で24〜26染色体数の花粉を放出する場合も正常2倍体と交雑可能であった。一方葯培養による花粉からの植物体への分化は高染色体数植物においても容易に可能で4倍体,3倍体および73,67染色体数植物より種々の染色体数の植物体が分化し得た。従って異る染色体数の花粉の受精能力は母本の染色体数との関係により制限されるが,葯培養による植物体形成能力は染色体数それ自体による大きな影響は受けないと考えられる。さらに2倍体へ受精可能な59,54および染色体置換型2倍体花粉の植物体形成能力と受精能力間には明らかな差異が認められた。すなわち受精花粉は植物体形成花粉に比し明らかに低染色体数のものが有利であった。これは受精に際し異る染色体数の花粉間に競争が働くが植物体への分化には花粉間競争がないかあるいは受精競争のようには大きくないことを意味する。しかし各種染色体数の紡培養より得た分化植物のあるものは幼植物枯死を起しやすいことから花粉からの分化時や胚状体形成過程にもある特定の染色体構成の植物が淘汰を受けている可能性が十分推定されるところでありいかたる染色体数の花粉も葯培養により平等に分化し得る能力を有するとは考え難い。
日本育種学会の論文
1975-10-31

タバコ花粉における異る染色体数の葯培養による植物体形成および受精に与える影響

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