自殖集団内の遺伝子型頻度・平衡値
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概要
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自殖集団の遺伝子型頻度が代数的には群環によって記述されることが知られている(SHIKATA、1963)。その場合、遺伝子型頻度は組換えの確率、生活力定数、世代数などの関数として記述されうる。この世代数を無限大に近づけた場合に、遺伝子型頻度が平衡状態に達するが、この平衡状態には各種あり、それらの状態を分類するとともに、平衡値を求めることを試みた。ここでの取扱いは連関する遺伝子座を考慮に入れて行なうことが可能である。類似の取扱いとしては、1遺伝子座の場合にHAYMAN and MATHER(1953)のものがあり、2遺伝子座の場合に特殊な条件を与えて解を求めたものにREEVE(1955)がある。還元分裂の際の組換え頻度を、胚嚢母細胞と花粉母細胞とにおいてそれぞれ2qおよび2pとし、2P=1-2p、2Q=1-2qとして、各遺伝子型の生活力定数および遺伝子型頻度を表1のように記すこととすると、生活力定数v_i,i=1,2,…,10をV_i,i=1,2,…,10によって書き変えた後に、遺伝子型頻度は付録1および2に記されているような形で求めることができる。ここでvとVとの書き換えは、V_k=v_k,k=1,2,3,4、V_l=v_l/2,l=5,6,7,8、V_9=2(PQ+pq)v_9、V_<10>=2(PQ-pq)v_9のごとくである。遺伝子型頻度の計算例が1つ表2に示されているが、他のすべての場合も同様の計算手続きによって遺伝子頻度の変化の状態も平衡値も共に求めることができる。平衡値はVの大小関係によって、多数の互いに一般には異る場合に区別されるが、これらの平衡値をすべて求めることは困難であるため、ここでは各種のVの間の相互関係を大きく幾つかに分け、それらの場合について遺伝子頻度の平衡値を求めてみることとする。まず、V_0、V_I、V_IIを定義して、V_0=V_1,V_2,V_3,V_4のうちの最大のV、V_I=V_5,V_6,V_7,V_8のうちの最大のV、V_II=V_9とV_10とのうちの最大のV、のごとくとする。これらのV_0、V_I、V_IIを用いて、場合1、V_0>V_I>V_II、場合2、V_0>V_II>V_I、場合3、V_I>V_0>V_II、場合4、V_I>V_II>V_0、場合5、V_II>V_0>V_I、場合6、V_II>V_I>V_0、なる6つの場合を考えることができる。この6つの場合について、平衡状態はそれぞれ数式上一定の形に求まり、その結果として例えば第3および第4の場合には(1)ダブルヘテロ接合子の平衡における頻度はすべて零となる、(2)少くとも1つのシングルヘテロ接合子の平衡における頻度は零または零と1とのあいだに来る、(3)少くとも1つのホモ接合子の頻度は平衡において零、あるいは零と1とのあいだに来る、などの結果を求めることができる。平衡値についての計算例として、v_1=v_2=1-s、v_3=v_4=1+s、v_6=v_7=v_9=1+t、v_5=v_8=1、の場合を考え、シングルヘテロ接合子の平衡値の数式表現を求め、t=3、s=0.2、の場合の平衡値が数値的にほぼ0.65であることが求められた。
- 日本育種学会の論文
- 1971-08-31
著者
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