イネ乾燥種子の熱中性子照射による放射線障害とその貯蔵効果
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概要
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X線やγ線と比較LてLET(線エネルギー付与)の高い熱中性子は,植物に対しても効果的な変異誘発原であることが明らかにされているが,作物の実際的た突然変異育種に応用するためには基礎的な知見の集積が更に必要である.熱中性子照射した種子では,誘導放射線量を減衰させるために照射後数日間放置される場合が多いが,この貯蔵期間中に熱中性子の照射効果が変更されるかどうかという点については一致した結果が得られていない.中性子捕獲反応から生ずる重粒子線の生物学的効果に加えて,放射化核種から放出されるγ線や混在γ線が生物学的効果に寄与しているとすれば,熱中性子照射した種子においても貯蔵効果が現れると考えられる.そこで本研究では水分含量を6.8%に調整したイネの種子(赤米)を用いてX線および熱中性子照射を行い,照射後1時間から21日間の貯蔵期間にわたって根長で測定した放射線感受性の変化を調査した. その結果,X線照射種子においては貯蔵期間が長い程顕著な貯蔵効果が認められ,照射直後に比べ21日間の貯蔵では放射線感受性が約2倍に増大した(Fig.1and Table 1).この貯蔵期間中における感受性の変化から,貯蔵効果には照射後24時間以内に急速た感受性の増大をもたらす要因とその後21日間にわたって徐々に発現する要因との2つが関与している事が明らかとなった(Fig.2).
- 日本育種学会の論文
- 1987-09-01
著者
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