人為突然変異によって育成されたイネ雄性不稔系統の遺伝的解析
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概要
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水稲品種ニホンマサリの種子を60Coγ線あるいはエチレイミンで処理して得た29の雄性不稔突然変異系統の雄性不稔性に関する遺伝的解析を行った.株分けによって栄養繁殖した系統の花粉の発育状態を観察した結果,葯内に花粉の認められない無花粉系統が最も多く,次いでヨード・ヨードカリで染まらたい不染色花粉系統が多く見られ,染色花粉系統は少なかった.雄性不稔株の穂に袋かけを行い自殖による結実状況を調べたところ,部分的に(3〜14%)結実したのは3系統で,ほかの26系統はすべて完全不稔であった.一方,これらの突然変異系統の雄性不穏株に糯品種の花粉を授粉すると,すべての系統が正常に結実した.これらのことから,すべての突然変異系統が雄性不稔であることが確認できた.糯品種との交配によるF_1植物は正常な自殖稔性を表わし,突然変異系統の雄性不稔性が完全劣性であることがわかった.次代のF_2集団における稔性の分離を調べた.その結果,5集団を除く24集団で,3稔:1不稔の単遺伝子性分離によく適合した.この分離比に合わなかった5集団の中4集団では,不稔株が期待値より少ない傾向が見られた.突然変異系統のもつ雄性不稔遺伝子の異同を確かめるため,それぞれの系統と糯品種との交配によるF_1植物の花粉を,ほかの系統の雄性不穏株に授粉して,次世代に現われる不穏株の分離を調べた.その結果,29系統中の2系統(MS15とMS29)は同一遺伝子座の遺伝子をもつことが明らかになった.すべての系統の間で総当り交配を完全に実施できなかったが,この研究で実施できた交配の範囲でも多くの突然変異系統がそれぞれ異たる雄性不稔遺伝子をもつ可能性が高いと見られた.
- 日本育種学会の論文
- 1986-12-01
著者
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